第583話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あの人のことは、まあ、フルネームでいいだろう⑦
その後も王都に潜り、私達は情報収集を続けた。
何の目算があって情報収集を続けているのかも分からないがとにかく情報を集め続けた。
情報収集を続けて、その情報をどう活かすのかも分からないまま続けていた。
その情報の中に私の欲しい答えがあるのかもしれない。
その情報の中に理想とする春日井真澄の姿があるのかもしれない。
無意識にそんな風に思っていたのかもしれない。
数日間があっという間に過ぎ、とうとう直弟子会議の日になった。
直弟子会議の場所はブーランジュ錬気場だった。
王都で最も由緒正しい錬気場だ。
子供の頃はここで【気】について学ぶのが夢だった。
そんな憧れの場所で、今、私は遠目で春日井真澄の姿を見ている。
忙しそうにディズレーリやお頭と打ち合わせをしながら場内に入っていった。
直弟子会議が行われるというのに警備は手緩い。
警備と思われる人間は外に数人しか立っていなかった。
考えてみれば、当然か。
今からここに集うのは一騎当千の猛者達ばかり。
自分よりも強者を護衛するなど、矛盾している。
彼らの役目は露払いに過ぎないのだろう。
ということはお頭の護衛だと言えば、容易に通してくれるだろう。
お頭の護衛に付けば、春日井真澄に会える。
それは分かっていた。
しかし、なぜだが近寄ることができなかった。
ブーランジュ錬気場の前で、行ったり来たり意味不明な行動を取りコ・エンブを不安にさせてしまった。
もっとも、メッテルニヒには見つかりまた、セクハラを受けた。
メッテルニヒから解放される際、会えるよう手配しようかと尋ねられたが断ってしまった。
恥ずかしかったのか、申し訳ない気があったのか、とにかく今はまだ、会うべきでない。
そんな気がした。
直弟子会議は成功したような失敗したようなよく分からない感じで終わったとのことだ。
クロサガ王との盟友でもあるパフレヴィー翁を味方に引き込んだとのことだ。
建国伝説にも登場する伝説級の老人である。
実力はお頭級。非常に好戦的で、その強さにも関わらず弟子を取らない狂人としてよく知られていた。
もはや、春日井真澄の人を焚きつける力を疑ってはいない。
春日井真澄がこうだと見込めば、大抵の人間は落ちるだろう。
意外だったのはその他の直弟子の取り込みに失敗したことだ。
弟子を持たないパフレヴィーを取り込んでも意味はない。
このままでは軍の設立など不可能だ。一体どうするつもりなのだろう。
いや、違うか。
そろそろ結論を出さねばならない。
私は彼女にどうなってほしいのだろう。
そして、私は彼女をどうしたいのだろう。
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まあ、やれるだけやってみます。
しかし、もう一回ここまでやるには1年以上時間がかかるからな~なんとか継続したい。