第580話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あの人のことは、まあ、フルネームでいいだろう④
お頭は王都に発った。
十数年ぶりの王都とのことだ。
十数前、破門騒動の時、随分と派手に暴れまわったらしい。
それ以降、王都は鬼門となり自分からは寄り付かなかったと聞いている。
まあ、王都でもお頭の振る舞いは伝説となっており、見つかれば問答無用で捕まるらしいが。
それら一連の入国許可の手続きを取ったのも春日井真澄だ。
どうやら、かなりの有力者を仲間に引き入れたらしい。
お頭はどう思っているのだろう。
あれだけの労力をかけて、ご破産になり、契約を切られ、今また、呼び戻される。
腹は立たないのだろうか。
尋ねてみると、もう10年以上休んだから大丈夫とのことだ。
人と一緒にいるとどうしてもこういうことは避けられない。
そういう時は溜め込むのではなく、発散しろとのことだ。
だったら盗賊ギルドでの1件では、もう少し優しく言ってくれればよかったものを。
いや、逆か。
本音では私の振る舞いを肯定しつつ上に立つ者の責務として罰したのか。
めんどくさい腹芸の解析ができてしまった。
そういうのには馴れたくない。
春日井真澄に対してどうしてソコまで協力的なのかも聞いてみた。
帰ってきた答えはひどくシンプルだった。
あれが英雄級だからだとのことだ。
リープクネヒトと同じことを言っている。
【フォリー・フィリクション・フロック】がなくても事を為すとのことだった。
だから、【フォリー・フィリクション・フロック】の責任者として介入しているとのことだ。
時代の節目節目に必ず現れる英雄級。
ある者は国を作り、またある者は歴史に名を残す偉業を成し遂げた。
彼ら彼女に共通するのは生まれつき特別だったということだ。
不思議な強運を持ち、やることなすこと全てに成功していく。
そして英雄級が一人で事を為すことはない。必ず仲間の協力を仰ぐ。
結果、英雄級の仲間達も漏れなく成り上がる。
英雄級の人物を見出したなら、何を捨てても追いていくべきだ。
なぜなら、彼らは必ず成功するからだ。
それがこの大陸の大原則の一つだが、実際は難しい。
英雄級だと信じた人物が実は山師で、何もかも失ったというのが大半だからだ。
もはや、英雄級の人物を見出すという行為自体がおとぎ話に近い認識だ。
なぜ皆、春日井真澄を英雄級だと断じるのか。
その判断の根拠は何なのか。
尋ねてみたら、勘とのことだった。
強いていうなら魂の輝き。
力ではなく、在り方で心服させられる相手。
心からコイツの力になってやりたいと思える相手。
それがお頭の考える英雄級の条件だった。
私には分からない。
最も最適な答えを容易く捨てられる相手のことなど。
しかし、もっと知りたいとは思えてきた。
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