第577話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あの人のことは、まあ、フルネームでいいだろう①
何をやってるんだ、春日井真澄は!!!
【皇帝】が転移し姿を消した後、私はブチキレた。
今の提案はどうやっても受けるべきだろう。
私達の要望の全てが入っていた。
誰に取ってもベストな選択だ。
【皇帝】にとっても、帝国にとっても、クロサガ王国にとっても、【フォリー・フィリクション・フロック】にとっても。
全ての人間の希望が結集されていた。
ただ一人、春日井真澄の意思だけが除外されたていたのだ。
春日井真澄が我慢すればいいだけの話だ。クロサガ王国の国民全てが彼女に感謝するだろう。帝国だって無用な犠牲を出さなくて済む。誰に取っても、メリットのある完璧な提案だ。
領主なら進んで人柱になるべきだ。
いや、帝国で存分にその腕が発揮できるのだ。彼女にとっても悪い話ではない。
「あんた馬鹿ですか。せっかく、侵攻計画阻止という目的が果たせそうだったのに、なに断ってるんですか。私達に断りもなく! 元々、無謀なテロ活動が、奇跡が重なることでどうにか成功しそうだったのに!」
もう、自分の感情を抑えきれない。敬語も何もかも捨てて自分の感情をぶちまけた。
私がココまで怒っているのは裏切られたという想いもあるからかもしれない。
春日井真澄が指示し、お頭が道を整え、私達が歩く。ひどく困難な道だった。
希望もなく、足元すら覚束ない道のりだった。
何度も衝突した。一度は完全に諦めた。
それでも奇跡と偶然が重なってついにゴールが見えた。
なのに、春日井真澄は急に目的地を変更した。
さらに違う場所を目指せと。
正直、裏切られた想いがある。
なぜ?
あなたが言い出したことでしょう?
一体、あなたはどうしたいんだ?
そんな想いが頭を灼く。
混乱した私に返した言葉はまた、ひどく抽象的なものだった。
「私の心の内では私は王だ。誰もが自らの王たらんとあってほしい。環境に流されることなく、状況に流されることなく、自分の道は自分で決めて欲しい。そして自らの王としての格が服従を拒んだのよ。困難ではあるが正面決戦を選べと囁いた。それだけよ」
言わんとすることは分かる。だけど、帝国と全面戦争するよりは余程いいじゃないか。格別の条件だったはずだ。
それに被害をうけるのはクロサガ王国国民だ。【フォリー・フィリクション・フロック】だ。春日井真澄ではない。
そのことを指摘すると苦笑いで返した。
少し寂しそうな笑顔が印象的だった。
そして、穏やかな声で春日井真澄は返事を告げた。
「ヨウメイ。大丈夫よ。あなたたちの役目はココまで。あなた達には即時撤退。別命あるまでクロサガ王国のアジトでの待機を命じるわ。決してこの戦争に参加することのないように。今までご苦労様。後は私の問題。私は会戦の準備に移るわ」
こうして春日井真澄は宣言した。
たった一人で帝国と戦うと。
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