第574話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あんな奴、あの女で十分だ㉑
翌日、私はひどくテンション低く目覚めた。
昨日は結局、リープクネヒトの太鼓持ちで全てが終わってしまった。
しかも、その挙句が成果なし。
あの女のことを笑えない。
結局は私もこの程度だ。
リープクネヒトは私が話をすると喜び、なんでもふんふんと聞いてくれた。
なんとなく脈があったように思えたのだ。
1日話こんで、彼女も満足したのだろう。疲れたから寝るといってゴリラ男の受付と交代して出て行った。
帰ろうとするリープクネヒトに襲撃計画の打ち合わせをしようとしたら、あっさり断られた。
曰く、『アレは難敵。倒すことは可能だが、戦うことで別の災いに巻き込まれる。私はもう、そこまで人生に情熱をかけてない』とのことだ。
乗せるつもりが乗せられたのはこちらだったということだ。
以前から、狙っていた鴨が自分からトラップに嵌った。リープクネヒトはさぞ痛快だっただろう。
最初から、私の依頼など断るつもりだったが私は酒の肴にはピッタリ。適当に話だけ聞いて楽しく酒を飲む。それがリープクネヒトの魂胆だったのだ。
おまけに私の頼みは断られたのに私は次回の飲みの約束をさせられた。
不平等条約だ。
依頼は失敗したがいい勉強にはなった。
今後は酒飲みには近づかないでおこう。
悔しくて、昨日は完全に不貞寝してしまった。
丸一日を完全に無駄にしてしまった。
今日はお頭から仕事を依頼されている。いつもの通り、あの女の護衛だ。
北の砦襲撃失敗後はしばらく自由行動と言っていたのに相変わらず方針転換が早い。
昨日、言ったことを今日変えるとは。
主義主張がないのだろうか。
そうやって、あの女へのヘイト値を貯めていたら、発案はお頭だったらしい。
ふん、だからってあの女の好感度が上がるわけでもない。
心中でそう評価がグルグル回っていたら、早くも目的地についた。
到着した先は人気のない墓場だった。
こんな辺鄙な場所で誰と会うんだ。
共の女がやたら口数が多くてうるさい。静かな墓場ではなおさら、その声がキンキンと響く。
どうやら帝国兵らしいがどうも平の兵士だ。せいぜいが五人長といったところか。
相手が帝国兵だからか、見ず知らずの人物のせいなのか、お頭がやたら警戒している。
こんなうだつのあがらない女相手に警戒しすぎですよ、お頭。
ただの情報の収集一つに御大層なことだ。
お頭が過保護すぎるのだ。
あの女も断ればいいのに。
墓場の先にいたのは妙な男だった。
こんなくたびれた場所を待ち合わせに使うのだからどんな男かと思っていたが本当に奇妙な男だった。
外見的特徴はそれほどないのにやたら存在感だけはある。
特にその目が凄まじい。爛々と輝き覇気に満ち満ちている。
そんな男が墓前で黙祷している。
何者だ!? こいつ。
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