第57話 報音寺響冴は語るセカンドワールドオンライン唯一の法則について
「なんとか倒せた~いやぁ~危なかったね~」
張り詰めていた空気が一気にはじけ、私はその場でだらしなく横になった。
「全くだ! 倒せたからよかったものの、反省点が山ほどある戦いだったぞ。まず、真澄とエミリー! 私はレベル325でHPはお前達とは比べ物にならないほどある。数分程度の状態異常や毒如きでは死なん。それを馬鹿みたいに突っ込みおって!」
渚も激戦で消耗していたのだろう、私の隣にドスンと座ってきた。
「ええっ、だったらそれを言ってよ~」
「そうですよ! 自分を顧みず真澄様の身代わりになり攻撃を受けるあの惨たらしい姿を見たらもう身体が勝手に動いていました。勝算があるなら仰って頂ければよかったのに」
エミリーも私の隣にきちんと正座をして座った。
「いや、勝算があったわけではないんだが・・・」
渚が頬をポリポリかきながらあさっての方向を向いてそう答えた。
「そういえば、報音寺君のあの回復のショット凄かったね!」
私はこのなんとも間の悪い雰囲気を代えるためにエミリーと渚の間に座った報音寺君に水を向けてみた。
「レベル19であの回復攻撃はありえない。お前は一体何者だ? レベルが低い割りに妙に情報通だったりおかしいと思ってたんだ」
渚は報音寺君の目を見て有無を言わさぬ状態でズバッと切り込んだ。
「ずいぶん、素人みたいな言い草をするんだね、天都笠さん。あらゆるありえないことがありえる。それがこのゲームの唯一の法則だよ。読んでいなかったこと、想定外、イレギュラー、こうだという確信をもった瞬間ゲームシステムは常にその裏を突いてくる。あらゆる想定外に備えながらも、さらにその先にある想定外について考え行動する。現象をありのまま受け入れながらも自らが流されることがあってはならない。自分の頭で考えてごらん。どうしてレベルが全てのこのゲームの中でレベル200のプレイヤーがレベル400のプレイヤーを打倒することができるのか? レベルが全てであってもレベルが全てではないからだ。ではレベル外のレベル、レベル外の強さとはなんなのか? 真の高レベルプレイヤーはそれを理解し、自ら体現している。例えばその内の一つ、最もメジャーなのが【ゲーム内ゲーム外スキル】だ。他にも【現実情報高度由来説】や【裏クエスト達成、そのボーナス武具装備】、【スキルクリエイトスキルの応用】など強くなる方法なんてプレイヤーの数だけあるし、その情報は金とは交換できないほどの価値があるからほとんど表には出てこない。その意味ではそんな質問をするってことは天都笠さんはまだまだレベル325ってことさ」
そう言われた渚は口惜しそうに唇を噛んでこれ以上聞こうとはしなかった。
なんだかよく分らないが分ることが分る人間が目の前にいるなら好きなだけ聞けばいいのに・・・二人のやり取りを聞いていて私はそう思った。
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