第563話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あんな奴、あの女で十分だ⑩
その後はまさしく急転直下だった。
お頭の指示で慌てて荷造りをし、出発した。
コ・エンブは随分と羨ましいそうな顔をして私を見ていた。
私だってこれが旅行や遊行目的で行くのなら楽しいが破壊活動だぞ。
捕まれば死刑。見つかっても死刑。バレても死刑だ。
おまけにパーティーにはあの女までいる。
お頭と2人きりならもう少し張り切るのに。
しかし、よく考えれば、これが初めての帝国行きだ。
クロサガ王国は準鎖国状態の国なのであまり外の情報が入ってこない。
そもそも国民が他国を訪れるというのも珍しい。
しかし、そんな中でも漏れ聞こえてくる情報はある。
なんでも有能な人材を広く集めており、お眼鏡に叶えば出自は問わず登用されるとのことだ。
幅広く有能な人材を求めているおかげで難民まで積極的に受け入れているという噂もある。
それなら、帝国に行って冒険者になるというのも面白いかもしれない。
空いた時間があれば帝国でその辺りの情報も集めてみよう。
そうして、数日があっという間に過ぎていく。
その間、あの女、春日井真澄をつぶさに確認したが本当に奇妙な女だった。
私が殺意を持って殺そうとしたことを本当に怒っていない。
というか、すっかり忘れている。
自分の命に無頓着すぎるのか、私程度の実力ではどうやっても殺せないと考えているのか、とにかく泰然自若としている。
常に自然体でいて、こうあらねばという型がまるでない。
単に大雑把な性格で細かいことは気にしないタイプなのかと思えばそうでもない。
私がお頭とあの女に引き離されまいと必死になって後を追っていると数歩先から必ず私の様子を見ている。
そして、私が限界に近づくと休憩を提案してくる。
よく見ている。
お頭もあの女も達人者級だ。
当然、身体能力も人間離れしている。
お頭は洗練された【白気】で、あの女は【黄金気】を使ってそれぞれ身体能力を強化している。
勿論、戦闘モードでないのでナチュラルに纏っている程度だが、それでも普通の旅人の倍の速さで行程が進んでいる。
私はといえば、そんな2人に追いていくために常に全力の【青気】を纏って行動している。
完全に戦闘状態だ。
【青気】はカラーオーラの中で最速を誇る【気】なのにまるで追いつけない。
追いていくのがやっとだ。
こんな全力展開を【常時発動】させていれば、あっという間にぶっ倒れる。
くやしいが休憩には感謝だ。
休憩がなければ死ぬ。
お頭は最初に参加を見送るよう警告しただけあって容赦ない。
一端の大人として扱ってくれるのは嬉しいが身体能力の差はいかんとも埋めがたい。
せめて、私にもあれだけのタッパがあれば、もう少し楽ができるのに。
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