第557話 死地に赴くヨウメイは過去を省みる。あんな奴、あの女で十分だ④
結局、私は合成毒を選択した。
よくよく考えれば、あの女がいつまでこのアジトにいるか分からなかったからだ。
速攻で勝負を決める必要がある。
私が選択したのは2つの液体が混ざると毒になる薬品だ。
コイツはさらに強い可燃性を秘めている極悪なものだ。
毒プラス火炎の2重コンボであの女を抹殺する。
既に薬剤の調合は完了した。後は命中させるのみだ。
しかも、2回。
1発目は問題ない。死角から放てば、必ずヒットするだろう。
問題は2発目だ。
あの女をお頭と同じレベルだと想定するなら、絶対に避けられる。
ココにも工夫が必要だ。
時限式で発射する仕組みを作るか。
奴の位置は探知トラップのおかげで正確に把握できている。
今は食堂にいる。
どうやらサ・ソウトウの話を皆と一緒に聞いているようだ。
正面から近づいては警戒される。
【気配断ち】を使い、天井から進入する。
仲間の何人かは私の存在に気付いているが、無視してくれている。
私を当馬にすることであの女の実力を測ろうとしているのだろう。
バラさないだけでも好都合だ。
慎重に慎重にあの女にバレないようにゆっくり進む。
とうとう目的地まで来た。あの女は私の真下にいる。
今ならどんな罠でも設置し放題だ。
懐から用意した毒物を取り出し、準備を開始する。
今、作っているのは2発目の仕掛けだ。
バケツに水と毒物を入れ、ロープを引っ張ることで遠隔攻撃を可能とする。
仕掛けとしては極めて原始的で、それ故、非常に短時間で作成することができる。
これにさらに時限式トラップを取り付る。
一発目は逆方向から投擲する仕掛けを作ろうと思う。
まあ、正味なところコイツを使っても殺すことはできないだろう。
お頭ならこの程度では死なないからだ。
しかし、確実に大ダメージを入れることはできる。
あの女がどんな顔をして慌てふためくか今から楽しみだ。
しかし、そこでふと考える。
もし、これでノーダメージだったら殺されるのは私の方では!?
あの女には私を殺せるだけの力が確かにある。
というより、あの女が本気を出した場合、止めることができるのはお頭だけだ。
今までは子供のやることと見逃してもらえた。しかし、暗殺未遂まで起こせば流石に反撃してくるのではないか。
死ぬ…私が!?
途端に恐怖が襲ってくる。
思えば今まで格下の相手しか殺したことがなかった。
それも遠距離から嵌め殺すパターンのみだ。
失敗すれば離脱する。それで全てが上手くいっていた。
だが、もし今回、このトラップを失敗すれば…
あの女が本気で私を殺しにきた場合、お頭は私のために戦ってくれるだろうか…
たとえ、それが私の稚気から出た行いだとしても。
またしても覚悟ができていない事実を突きつけられる。
このまま実行すべきか、それとも一度引いて、頭を冷やすべきか。
混乱した頭脳のままで作業を続行する。
その時だった。
時間になり、時限式トラップが発動する。
考えながら、注意散漫で作業していたせいだろう。時間も、合成毒の存在も完全に消えてた。
バケツの水を頭からかびせるという結果だけのこった。
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