第551話 決戦前夜⑬
いや、最強クラスの防御力と最強クラスの攻撃力を持っているのは私だ。
おまけに【白気】を使い回復にも特化している。
接近戦は私の方が有利。
問題は攻撃が当たらないということだけ。
ならば、こちらも範囲攻撃で削り取る。
「【白気散弾】」
広域に!
点ではなく面を意識して!
至近距離から放つ。
【白気】で構成された複数の【気弾】が三栗原を襲う。
流石にまずいと思ったのか、三栗原は大きく後方に距離を取って回避。
【白気】のレベルが上っているのか、一発一発の【気弾】のサイズが大きい。
おかげで十分な範囲攻撃になった。
いける!
【白泰山眞剣】
【白気】で構成された【気】の剣を投擲。
一本目は躱された。
しかし、それは想定の内だ。どうせ躱されると考え、威力も押さえ速射性を重視している。
【白鳴動眞剣】
続けて二本を目投擲。
大抵の敵がこの二本目で体を崩す。
そうして、それが三本目の布石となるのだ。
しかし、【白鳴動眞剣】は【次元斬り】で消失させられた。
動く的にピンポイントに当てることもできるのか!?
そういうことなら、三本目の発動は無駄だ。
戦術を練り直さなければ。
距離を取れば【次元斬り】を使われ、近距離では圧倒的な剣技で翻弄してくる」
互いに決め手がなくなったことで奇妙な膠着状態が生まれる。
不意に、三栗原が話しかけてきた。
「ふふっ、思った通り強いですね。これなら、あなたをPKした後、莫大な量の経験値が入る。もしかしたら、私にも【気】が発現するかもしれない。そうすれば、【次元転移】や【時間停止】のスキルも夢ではなくなる。私が八束の頂点に立つことも可能だ。嗚呼、早く死んで下さいよ」
意味不明な言動をしている。
こちらは【次元斬り】の攻略に手一杯だ。
相手をしてやる余裕もない。
「そういえば、PKも久しぶりですね。ログイン初期の時、以来でしょうか。ぶっ殺して金やアイテムが手に入るので随分、効率がいいと思った覚えがありますが…まさか、八束に入ってまでやるとは思いませんでしたよ。プレイヤーキルマイスターが感じる、恍惚もこういったものなのでしょうね」
馬鹿なやつだ。祥君の業はもっと深い。
あのPK衝動というものはもはや、言葉で表現できるものではない。
それでも、物欲や名声欲からは大きくかけ離れているのは分かる。
三栗原の感じる恍惚など、せいぜい、ガズナの美学にでも、かすっているかどうかだろう。
こんな女の口からPKのなんたるかについて聞きたくない。
私がこれまで行ってきたPKだって汚れる。
やはり、速やかに排除しなければ。
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