第548話 決戦前夜⑩
決意さえ、固まってしまえば後は実行するだけだ。
私とフェビアンは後ろを振り返らず全力で山を登る。
追っ手がかかる様子はない。
やはり、海老名のハッタリだったのだ。
死ぬ間際にまでハッタリをかますとはどんだけ、生徒会執行部に対して忠誠心が厚いんだ。
とっととA組を脱退して良かった。
周りの空気に合わせるタイプだからな、私は。
生徒会執行部に対して忠誠を示すことが高得点になるなら、絶対、点数稼ぎしてたぞ。
そして、いつしか本当に生徒会に忠誠を誓っているという…
よくあるパターンだ。
よし、もうすぐ山頂だ。ココまでくれば、後は私達の国の領土だ。
なんとか逃げきれたか…
そう思った矢先、目の前の空間が削りとられる。
【次元斬り】だ。
ということは!?
背後、20メートル程、後方に三栗原の姿があった。
山を登る時、追っ手が無いのは確認した。
ということは単純に向こうの移動速度の方が早いのか。
なら、逃げきれない。このまま、進めば背中から斬られる。
ココでやるしかないか。
立ち止まり、息を整える。
私が止まるとフェビアンも静止する。
しかし、表情は冴えない。
【白気】の使い過ぎだ。
海老名との戦闘で使った【拡散白気弾・紫雨】。アレの後遺症だ。
やはり、効果の持続時間が長いということは相当量の【白気】の消費があったか。
戦闘は私がやるしかないか。
どのみち、三栗原の【次元斬り】は厄介すぎる。可能ならココで叩いておきたい。
あれで城壁なんかを斬られたら、要塞なんてひとたまりもない。
いや、そもそも達人級を前にしては城壁なんてものは意味がないのか。
ひとりひとりがミサイルを打てるようなものだ。
そう考えると兵の数を揃えることばかり考えていたが、重要なのは達人級をどれだけ揃えられるだよな。
やはり、直弟子投入の戦略は間違ってはいなかったのだ。
「やあ、三栗原さん。よく、追いついてこられたね」
対峙し、軽く挨拶する。
正直、頭の中はあの【次元斬り】をどうやって攻略するかで一杯だ。
ディオクレティアヌスの装甲を抜けるなんて、何でも斬れる刀と同義じゃないか。
「陣形術【殿殺し】を使ったのよ。最も先頭にいる先行者の移動速度を倍加させ、敵陣の最後尾の移動速度を半減させる。まあ、【黄金気】と【白気】で守られているあなた達にはたいして効いてないようだけどね」
低いテンションで種明かしをする。
なるほど、あの陣形にはそういう意味があったのか。
【陣形術】なんて聞いたことがないぞ。本当に深いなこのゲーム。
確かに心なしか移動速度が遅いように感じてはいた。
消耗しているフェビアンに合わせているからだと思っていたが違っていたのか。
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