第547話 決戦前夜⑨
「私の負けのようね…止めは刺さないの? 私を殺せば莫大な量の経験値とお金が入るわよ。レアアイテムもまあ、少しぐらいは持ってるわよ」
海老名も私と同じプレイヤーだ。致命のダメージを受けたといっても痛みはない。
しっかりした声でしゃべっている。
私達プレイヤーはHPが1でもあれば、通常通り活動可能なのだが私とフェビアンを前に見苦しい抵抗は諦めたのだろう。
「生憎とボスは無用な殺しを嫌うタイプでね。無効化できれば、それでいい…」
「…そう。プレイヤーキルマイスターの相棒のくせにね…」
がっくりしたのか、安心したのか、拍子抜けしたような声で海老名な続ける。
「まあ、けど楽しかったわ。初の生徒会執行部のクエストで見せ場は作れなかったけど…早く行きなさい。そうそう、あなたの発言、一つだけ間違えがあったわよ、フェビアン。私が効を焦って単独戦闘を仕掛けたって下り。あれは間違えよ。私は足止めを命じられただけ、応援は既に呼んであるわ」
後方を見れば、確かに兵士が集まり始めていた。篝火が見える。どういうことだ?
人海戦術で私達の居場所を探すつもりか?
【聖竜皇召喚】の威嚇が早くも効果を失ったということか?
死の恐怖を打ち消すほど、強力な統率力を持った指揮官が現れたのか。
だとしたら、ソイツだけは優先的に倒しておかねばならない。
どうする!? もう一度、帝国の本営にちょっかいをかけ、さらなる情報収集を行うべきか?
それとも、このまま逃げるべきか?
「たった2人でどこまでやれるか、拝見させてもらうわ」
不吉な言葉を呟き、海老名はそれきり黙ってしまった。
海老名の言葉自体、ブラフの可能性もある。
乱れた陣形も普通の指揮官がいれば整えるまでは容易い。
しかし、兵士がビビっているのにそれを鼓舞して、突撃命令を出し、それを完遂できるかとなれば話は大きく変わってくる。
そこまで行けば、個々の指揮官のレベル差によって結果が変わってくる。
優秀な指揮官であれば、部下にどんな困難な突撃でも完遂させる。
無能な指揮官であれば、部下は命令など無視して皆、散り散りに逃げる。
誰だって死にたくないし、ケガなんかしたくない。
そして、命令できるほど優秀な人間であれば、そもそも、そんな無謀な命令自体を行わないだろう。
最低限度の勝算すら見つけられなければ、部下を犬死にさせてしまう。
優秀な人間というのは部下を可愛がる。粗雑な扱いをすれば、部下が上官を見捨てる。
結局のところ、極限状態においては階級なんて飾りなのだ。
よし、相手の優秀さに頼ろう。
セオリーは私を達人級で潰してからの進軍だ。
フェビアンも今の戦闘のせいで完調ではない。
プランに独自にアドリブを入れてプラン本体が潰れるという話はよく聞く。
やはり、当初のプラン通りココは撤退しよう。
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