第546話 決戦前夜⑧
「お前はあまりに近距離戦に特化している。故に距離を取って戦えば恐るるに足りず」
そう言うと充填していた莫大な量の【白気】を空中に放つ。
「拡散白気弾・紫雨」
空中で白気弾が分裂し雨霰のように降ってくる。
ちょっと、これ!?
私にも当たってるんですけど!
さしもの海老名も回避に専念している
しかし、周囲一体にばら撒かれた範囲攻撃。
故に海老名は避けようがない。
しかも、効果が持続している。一向に止む気配ない。
【白気】をこんなふうに使うことができたとは。
「避けることを前提に戦術を組み立てているから防御が非常に貧弱だ。俺はただ、待っていればいい」
【白気】の雨は当然、術者であるフェビアンにもかかっている。しかし、フェビアンにヒットすると回復していくようだ。
紙装甲である海老名にだけ一方的に不利なバトルフィールドだ。
ちなみに私は【黄金気】を纏えばノーダメージ。【白気】を纏えば私のHPも僅かだが回復していった。
元々は全体回復の【スキル】だったのかもしれない。
「戦術に創意工夫がまるでない。スペック的にはそちらの方が上だ。徹底的に体術を極め、さらに圧倒的なまでの切り札を得た。ガチンコのぶつかり合いでお前に勝てる奴はそうはいないだろう。だが、全てを力押しに頼った弊害が見て取れる。思考が停止してしまっている。これなら、あらゆる手段を使って他人を計略にのせる春日井の方が断然、脅威だ」
避けることを諦めた海老名はまっすぐ、フェビアンに向かう。術者を殺し、死中に活を求めるという考えなのだろう。
しかし、そのような単純な戦法はフェビアンには当然、読まれている。
「おそらく、ある程度まではソロで活動し、そこからパーティー戦に移行したのだろう。そうであるなら、始めからパーティー戦で挑むべきだった。効を焦って単独戦闘を仕掛けたのがお前の敗因だ」
消滅の力を持った指がフェビアンを襲う。
【幻体術】ではない、【幻光闘法】だ。
しかし、ダメージ蓄積があるのか海老名の動きには精彩がない。
私でも捉えられるほど、動きがスローだ。
さらに、一瞬、海老名の動きが完全に止まる。
海老名の身体に【白気】でできた糸のようなものがまとわりついている。
静止したのは数秒、まさに刹那の時間であったがその隙を見逃すフェビアンではない。
海老名の肘を折り、【消滅】の力を持った指を海老名自身に叩きつける。
自分で消滅の効果を喰らった海老名は膝を折り、倒れる。
まさにステータスの不利を技量と知性で補ったお手本のような勝負だった。
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