第545話 決戦前夜⑦
得意の緩急をつけたステップで海老名は瞬時にフェビアンに接敵する。しかし、フェビアンも海老名の接近を完全に読み、【白甲壁】でブロック。
相手の攻撃力が高ければ高いほど痛烈なダメージを与えるフェビアンの攻性防御だ。
しかし、苦痛に顔を歪めたのはフェビアンだった。
やべ、幻体術の特徴を伝えるのを忘れていた。
さらに海老名の攻撃は止まらない。先程の発光現象を伴った攻撃だ。
あれに至っては防御箇所に甚大なダメージを与えている。
防御するだけ、損傷箇所を増やし、むしろ損だ。
フェビアンもそれに気づいているのか、私を助けてくれた時のように発光場所以外をピンポイントで選び、攻撃を捌いている。
どうやら、格闘戦の技量自体は紙一重でフェビアンの方が上のようだ。
今も海老名の攻撃を利用して大きく距離を取った。
「気をつけろ、フェビアン。アイツは【気】の防御を無視して攻撃を入れてくるぞ~」
遅ればせながら、アドバイスを送る。
攻撃を喰らった後に、助言をしたりして怒っているかと思ったがひどく上機嫌だ。
フェビアンは【白気】をフル動員させて、損傷箇所を修復している。
流石は【白気】の達人。私より、数段上の回復力を持っている。
もう、腕の出血が止まっており、傍目にも戦闘に耐えれるほど回復していた。
私と戦っていた時はこの超回復は使っていなかったように思う。
どうやら、私も知らない切り札をいくつも隠しもっているようだ。
「【幻体術】というやつか。幻が実体を持ち、実体が幻と化す文字通り幻の闘法。さらに両腕に凝縮された発光体。あれはマズイな。【消滅】の特性を持っているのか!? まともに喰らえば、俺も即死を免れん。それを【幻体術】と組み合わせて使ってくるものだから、やっかい極まりない。発光拳の方が囮だと分かってはいるが、意識を集中するあまり【幻体術】への防御が疎かになる。やはり、世界は広いな」
「やっぱ、私も加勢しようか?」
「いや、ボスが死ねば、この戦争は終わる。ボスを絶対に生還させるという条件でなんとかグラッドストン達を説得してきたのだ。もはや、毛筋の傷も許されん。それに【聖竜皇召喚】は帝国軍への最大の抑止力となった。たとえ、死ぬとしてもあんたは一番最後だ。ココまでお膳立てしてもらったんだ。あんたを守りきることができなければ、俺達はとんだ無能だ」
そう言うと、私に対して歯を見せて笑った。
「心配ない。既に攻略法は見えている。後は上手く実行できるかどうかだ」
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