第544話 決戦前夜⑥
「遅くなってすまん。引継ぎに手こずった」
バツの悪そうな顔をしてフェビアンは謝罪を入れる。
そうなのだ。流石に1人での突入は生還の可能性が低かったのでフェビアンに護衛を依頼していたのだ。
私の護衛に誰を当てるか。その選定作業もなかなか難しい仕事だった。
グラッドストンは大要塞マムルークの指揮を任せないといけない。ディズレーリとパフレヴィーはその補佐。
クーリッジは制御不能だし、メッテルニヒも帝国兵を前にしてはどう動くか分からない。
消去法でフェビアン一択しかなかった。
決して他の連中だと私の企てに賛成しないから。
1人で帝国軍に喧嘩を売るなんて言った日にはディズレーリあたりの指示で牢獄に落とされてしまうなどと思ったわけではない。
本当はフェビアンにも指揮を担当してほしかった。
なにせ志願兵の数に対して指揮官が圧倒的に足りてないのだ。
遅参した理由はその当たりにもある。とある仕事を依頼していたのだ。
「いえ、ベストタイミングよ。後は撤収するだけ。けど、見ての通りの難敵。さらに、時間をかければコイツと同じくぐらいの強敵がワラワラ集まってくるわよ」
「それは楽しみだな。しばらくココで時間を稼ぎ情報収集に勤しもうか?」
冗談めかした口調でフェビアンが提案してくる。コイツも大概、バトルジャンキーなのだ。手綱を握り間違えれば、どこまででも死に走る。
よって最も欲しいであろう答えで返す。
「独り占めしたらクーリッジやパフレヴィーの爺さんからクレームが入るわよ。心配しなくても私に追いてくればこの程度の敵、いくらでも遭遇するわ。悪いけど私は索敵と回復に当たるから加勢はしないわよ。今日のところは護衛の仕事をキッチリ果たしなさい」
「了解だ」
海老名とサシで殺れる環境を整え、今後の報酬の約束もした。
満足そうな様子でフェビアンはあっさりと私の命令を呑んでくれる。
「話はまとまったようね。まあ、単独行動しているとは思ってなかったけど、護衛がたったの1人とは盟主としての格が知れるんじゃない?」
律儀に私達の会話が終わるのを待っていた海老名は早々に挑発を開始する。
「ペラペラとよく、口の回る女だ。その拳は飾りか? いいからとっととかかってこい」
挑発に対して挑発で返すフェビアン。
盗賊時代の地が出ているぞ!
「たかがNPC風情が偉そうに。倒した後に【奴隷契約】でも結んで一生、喋れないように命令してあげようかしら」
その一言を皮切りにフェビアンと海老名の戦闘が始まった。
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