第542話 決戦前夜④
さて、あの【次元斬り】を使う剣士からはまだ相当な距離がある。
今日のところはこのまま、帰らせてもらうか。
次に戦場であった時がお前の最後だぜ。
などと考えていたら私が潜んでいた辺りに空爆が行われる。
一発一発が致死量の爆撃だ。
【神亀の加護】をオンにしていなければやられていた。
探知系の達人者級も出てきたか。
そりぁ、いつ殺すの?
今でしょ!!
になるよね…林先生。
元々こちらからフライングぎみに攻撃したのだ。
帝国側にしてみれば意地でも犯人見つけて、ぶち殺したいだろう。
こうなると第1関門はいかにして敵陣のど真ん中から逃げ帰るかだな。
幸い今の攻撃は範囲攻撃だった。
完璧に私の位置を捉えているなら威力を絞った精密攻撃を使ってくるはず。
大まかにしか私の位置が特定できてない証拠だ。
このまま攻撃に耐え隠れてやり過ごすか、最速最短距離を使って逃亡すべきか…
と思ったら、逃げ道を封鎖する準備を始めている。
不味い。
やはり、大まかな位置は特定されている。
あそこを封鎖されると退路を絶たれる。
一度、ログアウトし、再度、ログインする手も考えたがココは一応、帝国領って設定のはずだしな。
それに戦争イベントが発生している。
プレイヤーしか使えない不正行為を行って、戦争を有利に進めるとシステムは莫大なペナルティを与えてくる。
それこそ、確率を弄ってくることだって考えられる。
この場は切り抜けられても、後でやる決戦の最中に帝国に有利な状況を作ってくるかもしれない。
その辺り、システムは全ての知性体に対して平等なのだ。
どちらか一方に加勢することがない。
NPCにもプレイヤーにも極めてフェアに接してくる。
よって、ログアウトの選択肢は却下。
ならば、いつも通りの強行突破だ。
【黄金気】を全力展開して爆進する。
封鎖を行っている帝国兵などなぎ倒す。
1人、2人、一般兵など、まるで相手にならない。
撫でるように拳を振り回すと勝手に吹っ飛んでくれる。
その要領で3人目の排除にかかる。
3人目は女の兵士だった。
無論、関係ない。
男女平等万歳。
目の前の女に渾身の力を込めた拳を叩き込む。
しかし、私の拳は空を切る。
確実に相手を捉えていたのにだ。
「【二段蹴り・極】」
カウンターが見事に決まり、後方に大きく吹き飛ばされる。
しかも【黄金気】を抜いて私の本体にダイレクトダメージを与えてきた。
これは幻体術!?
そして、あの技は!?
何度も喰らったから当然、分かる。
それを使うプレイヤーの名も。
帝国兵の兜を脱ぎ捨てると鮮やか赤髪が映える。
軽やかなショートカットだ。
八束学園1年A組の海老名がそこに立っていた。
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