第541話 決戦前夜③
突如、帝国軍の陣中に小山ほどある巨大竜が出現する。
ディオクレティアヌスの姿を見ると帝国兵は我先に逃げ出していく。
無論、見張りの兵も警戒ぐらいはしていただろうが流石に埒外の存在だ。
こんな存在が現れれば、普通、逃げるだろう。
というか逃げてくれ。
一方的な虐殺なってしまう。
(ディオクレティアヌス。ひとしきり暴れたら撤収だ。目的は達人級を釣り出すことだ。やり過ぎるなよ。帝国兵に恐怖を与えればそれでいい)
(承知!)
ディオクレティアヌスは小気味良い返事を返すと必殺の【インペリアル・ドラゴンズ・ホーリー・ブレス】を放つ。
辺り一面、一撃で焦土と化す。
だからやり過ぎるなよって言ってるのに。
魔法抵抗の弱い者は骨すら残らず消失してしまった。
戦友の死を間近で見て何人かの兵が死にものぐるいでディオクレティアヌスに抵抗する。
しかし、その圧倒的な防御力を抜くことはできず、皆、瞬殺されていく。
そう、私は敵兵がどれだけ集まろうとも脅威には感じていなかった。
ディオクレティアヌスを開放された空間で召喚してやれば、それだけで事足りるからだ。
最大の問題は達人級だ。
そう思っていたら、いきなり来た。
一瞬、空間が歪むのが見えた。
次の瞬間、ディオクレティアヌスの腹部に極太の線が入る。
たまらず、地に倒れるディオクレティアヌス。
大丈夫だ。死んでない。
誇り高き【竜皇】らしく声も上げずに倒れた。
召喚を解除し、返還する。
だが最高クラスの防御力を誇るディオクレティアヌスにあそこまで巨大な刀傷を与えるとは…
なるほどアレは【次元斬り】というやつか。
ディオクレティアヌス本体を斬ったわけではなく、周辺の次元を斬ったのか。
ならばあの大ダメージも得心がいく。
【物理防御無効】を持っている奴がいるのか…間違いなく達人級だよな。
土煙の中で1人の男が納刀するのが見える。
よし、大物が釣れた。
目標達成。
後は速やかに撤収するのみ。
敵も私がディオクレティアヌスを投入すれば、今のように兵を引かせて達人級を出さざるを得ない。
それなら始めから達人級を先行させて術者である私を殺し、その後、大軍を使ってくるはず。
常識的な指揮官ならそう判断するはずだ。
大規模兵力同士の決戦ではなく、達人級同士のぶつかり合いに持っていく。
これなら、上手く立ち回れば双方、最小限度の被害で済む。
そして、数と質に劣る私達が勝てる唯一の方法。
私の望む図式が完成した。
最大の問題は私が最後まで生き残り、敵の大軍に睨みを効かせないといけない点だが。
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