第539話 決戦前日①
我孫子が指定してきた決戦の日の前日。私は大要塞マムルークにいた。
周囲は人であふれている。私のゼンチュウ通りでの演説が功を奏し、志願兵を大量に集めることができた。
問題は非戦闘員ばかりな点だ。
とうとう反対派の直弟子は1人も集めることができなかった…
「ね~ね~早く戦いに行こうよ~コレだけの戦力があればどんな敵でも倒せるよ~」
そう言うのはクーリッジだ。無邪気な瞳で私の顔をのぞいてくる。
最近はやたら私に懐いてきて、甲斐甲斐しく世話を焼いてくる。しかし、敬語が崩れかけているのが問題だ。
クーリッジの視線の先にはフェビアン、グラッドスソン、ディズレーリ、パフレヴィーがいた。
なぜかコ・ガイシまでいる。
荒々しく野戦厨房を仕切っていた。
「駄目っすよ、クーリッジ。個の質がまるで足りないっす。この程度の戦力で我孫子に挑んでも護衛に瞬殺されるっす。アイツ、昔から仲間集めは得意でしたから」
なんだかんだでメッテルニヒもずっと追いてきていた。
クーリッジの操縦が非常に上手く暴走を防いでいた。気が合うのかもしれない。
「コレだけの数の志願兵が集まるとは…壮観ですね。多分、私は今、この国で最大の兵数を持っていますよ」
私達が話をしているとグラッドスソンがフェビアン、ディズレーリ、パフレヴィーの幹部組と話をしていた。
彼らも先程、到着したばかりなのだ。
「だが、ほとんどが非戦闘員だ。春日井の奴、なんでこんな使えねえ奴ばっか集めたんだ?」
そう言ったのはディズレーリだ。手勢も連れず1人でやってきた。
官職の方は問題ないのだろうか。
「まあ、王城の奴らにはたいそうなプレッシャーになったんじゃないか? いざとなれば、全面降伏すればいいし、その間に希望する住民を逃がせばいい。コレだけの数の人間が降伏すれば処置にかなりの時間がかかる。この一報でクロサガ王国に激震が走ればボスの計略通りだろう」
フェビアンはディズレーリの発言を一刀の元に切り捨てる。相変わらず謎の忠誠心を私に捧げてくる。
「また、お前はそうやって極論を言う…」
自分の言が暴論によって崩されたことでディズレーリは渋面を作る。
しかし、その声に憂いはない。
まるで昔もこういったやり取りがあったと懐かしんでいる様子だ。
「しかし、直弟子連中はそれぞれに立場があるから分かるが結局、我らが黒佐賀師匠も来なかったな…俺としてはプレスビテリアン帝国と一戦するより先にあの男との再戦も十分有り得ると思っていたのだが…」
肩透かしを喰らったかのような様子でフェビアンはつぶやく。そのぐらいの覚悟を持ってココまでやってきたのだろう。
「あの男はそういうもんじゃよ。時折、数ヶ月程、ふらりといなくなることがある。その後、帰ってきたらさらに一回り強くなっておったりな。統治に飽いておるという噂もある。フェビアンが下野した時もしばらく王城に寄りつかんかったからな…」
パフレヴィーが最年長者として的確なフォローを入れる。
しかし、私としては別の可能性の方が思い当たる。
おそらく遠征中なのだろう。
もっと下層に。
まだ見ぬ敵を求めて。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチッとが私の創作の『ぐっ、気を抜いたら連続勉強記録が途絶えた…やっぱ、ふとした気の緩みが綻びを生む。定時に場所も固定してやった方がいいのか…』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。