表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
538/985

第538話 デカイ図体でも几帳面なサンケイ⑧

 「上層部が決めたから。政軍分離の原則があるから。なにより、自分達は無力だから。動かない理由は様々だろう。動かないことを責めている訳ではない。皆、それぞれに生活があるのだ。同時にサンケイの一門の長としての判断も蔑ろにすることはしない。彼も最大公約数を汲みとったにすぎない。しかし、ココは自分達の国なのだ。直弟子に任せるのではなく、そろそろ自分で動いてみることも考えてみるべきじゃないか」


 静かにハッキリと徐々に声のボルテージを上げながら伝える。


 「今、この料理大会は変わった。来年、開催できるならもっと素晴らしいものになるだろう。この料理大会と同じようにクロサガ王国も変わるべきではないか?」


 いつの間にか、観客は皆、しわぶきひとつなく、私の演説に聞き入っている。


 「間もなく、私は出征する。無能領主の評価を持つ私では兵は集められないだろう。だが、私は1人でも行く」


 私の宣言に皆が動揺する。帝国数万の兵を前にそれはあまりに無謀な賭けだからだ。  

 

 「誰かに任せるのではなく、自分の力で国を守りたい。その想いが私の根底にあるからだ」


 そこで、大きく息を吸い、呼吸を整える。

 そうして、料理対決を始める前から用意していた台詞を吐く。   


 「故に私はここにいる同志に向かって檄を飛ばそう。流転する運命に流されて生きることが嫌なら私の元に集え。私がその命を有効利用させてやろう」


 私のその一言で観客の目に火が入る。想いが届いた結果だ。故にさらに続ける。   


 「戦闘だけが戦いじゃない。志があるなら、どんな力も歓迎する。故に志があるなら、大要塞マムルークに集え」


 私がそう叫ぶと観客は歓呼の声で迎えてくれた。

 それはまさに会場が一つになった瞬間だった。




◇◆◇  




 「やってくれたね。ここは由緒正しき料理大会の場所なのに、政治の場にまで堕落させてくれちゃった」


 私が演説を終え、ステージ上からハケようとするとサンケイが待っていた。


 「その割に邪魔をしなかったじゃないか。本音ではサンケイも戦いたいんじゃないの? 」


 「…」

 

 「仲間集めはコレで終わりだ。成功はしなかったが打てる手は全て打ったつもりだ。後は決戦の日を迎えるのみだ」


 「本当に1人で戦うつもりなのかい? 直弟子の援護もなしに」


 「当然だ。言い出した者が命をかけないで、誰がその言葉の正しさを証明する」


 「まあ、サンケイの参加も待ってるよ。ところで気付いたかな、さっきのスイートポテトの仕掛け?」


 このまま、帰るのも味気ない。わずかな茶目っ気を出す。


 「サンケイに出した品はガリポリ産だったんだよ。もちろん、代替品なんてどこにでもある。けれど、今日、君を感動させたサツマイモは戦争が起きれば手に入らないよ」


 サンケイは随分、複雑な顔をしている。迷うぐらい私が出したスイートポテトは個性的な味だったのだろう。


 「君が戦う理由はそれで十分でしょう」


 それだけ告げると私はステージを後にした。


 読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。

 ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。

 皆様のポチッとが『満腹だと眠い。空腹だと疲れが…バランスを取るのはムズい』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ