第534話 デカイ図体でも几帳面なサンケイ④
さて、私は何を作るべきか。
色々、店舗をのぞいてみるがどうもしっくりくるものがない。
その間にもコ・ガイシの仲間だと思われる人間がちょこちょこ動き回っている。
どうやらコ・ガイシ自身は食材の調達には行かず全体指揮を担当し、買い付けは全て仲間にまかしているらしい。
しかも、その店舗にある1級品の食材を残らず買い占めているという。
オープンバトルのルール設定にはどんな手段を使っても構わないとあるが、なかなか知恵の回るやつだ。
おかげで店舗には2級品の材料しか残っていない。
それも大量にだ。お店の人もこんな偏った品揃えは嫌がるだろう。
そんな状況をつぶさに見ていると決心が固まった。
「ってこの食材で勝負する気ですか!? 向こうが最も得意とする食材ですよ」
私がチョイスした食材を見てクーリッジは驚く。その食材はどの店舗にも大量に売っており、用意することに苦労はなかった。
「まあね、今の私の実力じゃ、あんまり複雑なメニューは不可能だ。ガチンコバトルで勝つんじゃなく、オープンバトルの特性を生した上で勝ちを狙おう」
私は笑顔でそう返した。
◇◆◇
大急ぎでステージに戻ると、既に1時間はとうの昔に経過していた。
私達が戻るだけで観客からは歓声が上がった。
ようやく見世物として成立したからだろう。
コ・ガイシは既に火入れまで始めている。
ちらりと私達の方を見ると私達の食材の量に驚いていた。
こちらもいよいよ、調理開始だ。
メッテルニヒが食材の皮剥きを行い、私がボイルと味の調整、クーリッジが【赤気】を使って次々と焼いていく。
【赤気】は転用すれば遠赤外線効果を生む。
そんなクレイジーな技はクーリッジにしかできないがおかげで非常に良い感じで焼けている。
「時間です!」
実況の静止の声が響く。
なんとか間に合った。
まあ、工程自体は簡単なものだったが。
最初に試食に移るのはコ・ガイシだ。
早歩きでサンケイの元にたどり着き、提供する。
普通はどっちが先に実食に移るか相談しそうなものだが当然のように行きやがった。
まあ、その方がこちらとしても好都合だが。
コ・ガイシが作ったのはやはりチャーハンだった。
「海鮮チャーハンです」
蓋を取ると芳醇な香りが辺り一面に広がった。
敵方の品なのに私の腹の虫まで鳴る。
「海の幸、山の幸がふんだんに使い、具たっぷりで完成させました」
サンケイは瞑目するようにまずひとくち、口へ入れた。
その光景は観客に、まるで時が止まったかのような錯覚まで与える。
その後、脇目もふらず食べ始めると、あっという間に完食してしまった。
「うん、美味い。素晴らしい出来だね。これまで食べたチャーハンの中で一番、美味しいよ」
サンケイの破格の評価にコ・ガイシも口をほころばせる。
背後では歓声も上がった。
コ・ガイシの仲間達も手と手を取り合っている。
観客も大きく湧いている。
そりゃ、見てるだけでも美味そうだもの。
だが、それはあくまで個の評価だ。
私の狙いは別にあるのだ。
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