第531話 デカイ図体でも几帳面なサンケイ①
「おおっと、ここで乱入者の登場だ!!!」
急なハプニングを楽しむ様子で司会がノリノリの実況を行っている。
私はというとこんな公衆の面前でズッコケおり、恥ずかしいことこの上ない。
照れ隠しにパタパタと埃を叩きながら立ち上がる。
「さっきの探査は君かい、春日井? 食事中にピンを刺すのは失礼だよ。皆、真剣にやってるんだから」
冷たい目をしてサンケイはつぶやく。
「着地の失敗はその意趣返しだよ」
自分の不注意で失敗したと思っていたがそういう【気】もあるのか…
そういえば、着地面の感触がおかしかったような…
「おい、貴様。勝者の俺を差し置いて何を美食公に話しかけている。無礼だろう」
先程、サンケイに試食してもらっていた男性が凄い剣幕で私に文句を言ってくる。
確か名前はコ・ガイシ。
「僕は構わないよ~この人も直弟子の1人で、領主様でもあるしね~」
サンケイがそう言うとコ・ガイシは素直に従う。
どれだけ信頼されてんだ。
「それでこんなとこまで押しかけて何の用?」
「私の用件は聞かずとも分かるだろう。直弟子投入に力を貸してくれ」
「嫌だよ。直弟子会議で決着したじゃん。ドレフュスを怒らせたのは春日井だろ」
「ドレフュスは説得した。その証拠に彼女の最強の弟子が私に随伴している」
ステージの上からクーリッジに目配せする。
探さなくともすぐに分かった。
いつの間にやら、メッテルニヒと一緒に最前列まで来ている。
クーリッジはキラキラした目で私を見ている。
これも演出の内だと勘違いしているのだろう。
全くノープランなのだが…
「…最強の弟子って、クーリッジでしょう。僕は彼が嫌いなんだ。さっきの探査も彼が真犯人か。春日井も庇ってるくらいなら彼の欠点が分かるでしょう。単にクーリッジがワガママを言ってドレフュスの元から家出しただけじゃないの? とても信用できないな」
サンケイは訝しむような様子で疑義を挟んでくる。
意外と頭が回る。鈍そうな外見に騙されてはいけないのかもしれない。
「けれど、このままではダーダネルス・ガリポリ領が戦火にまみれてしまう。それだけはなんとか避けたいんだ。頼む、サンケイ」
論理や利益では駄目なタイプか?
真摯な態度で臨む方が効果的かもしれない。
私は頭を下げ、熱意をこめて頼む。
「僕には関係ないよ。全ての国民を救えると思うほど、傲慢でもないからね」
この方法も駄目か…
ドレフュスのようにもっとサンケイがぐらつく材料を示さないと駄目だ。
となると、やはりこのステージ。
美食公という二つ名が鍵か。
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