第530話 クーリッジに教えてあ・げ・る④
さて、この人混みの中からどうやってサンケイの位置を割り出すか…
取りあえず、3手に別れて…
「今、索敵をかけるんでちょっと待って下さいね」
クーリッジは当然であるかのように提案してくる。
索敵もできるのか!? 流石、天才!
しかも、私に対して交換条件も持ち出さず、見つけるまでが自分の仕事だって流れで進めている。
おおっ!?
わずかな指導でココまで変わるとは…
これは拾いものだったかもしれない。
「【赤周針査】」
クーリッジが【スキル】を使うと頭にピンが刺さるようながイメージが湧いた。
痛みはない。
せいぜい小石が当たった程度の感覚だ。
これが索敵のパッシブウェイブなのだろう。
セカンドワールドオンラインの中では索敵系のスキルを使うと探査された側にも何らかの違和感として通知される。
その違和感を正しく分析できるかどうかは本人の技量次第だ。
私などその知識を知った時、疑心暗鬼になってしまった。
虫の知らせ程度の微かな違和感すら何かの信号なのではないかと疑ったせいだ。
その点、今のクーリッジの【赤周針査】は絶妙だな。
痛みがなく、一瞬の違和感のみだから達人者級の使い手でなければスルーされてしまうだろう。
私の【聖皇式理力探知】とは大違いだ。
辺り全域をくまなく探査できたのも不思議だ。
これだけのエリアを探査するにはかなりの量の【気】が必要なはずなのに。
エリアをくまなく探査するには莫大なエネルギー量が必要、しかし、パッシブウェイブも巨大となり受け手に警戒感を与えてしまう。
まさにトレードオフの関係で匙加減が非常に難しい。
クーリッジはそれを高い次元で成功させている。
本当、どうやっているのだろう。
「いました。あっちですね。行きましょう」
クーリッジ主導で先に進む。なんというか不気味なぐらい順調だ。
クーリッジの進んだ先はさらなる人混みであった。
どうやら何か催しものをやっているらしい。
肩と肩がぶつかるぐらい混み合っておりひどく不快だ。
何をやってるんだろう?
人の流れが完全に止まってしまい、まるで分からない。
歓声のようなものは聞こえ、盛り上がってるようだが。
いつの間にかメッテルニヒは剣を取り出し、器用にバランスを取って剣の上に立ち、行列の先を見ている。
そこまでして、見たいものなのか?
行列の先には大きな建物がある。あそこの屋根からなら見えるかな?
大きくジャンプし、一気に行列を飛び越える。
飛び越える瞬間、眼下を見下ろす。
いた。サンケイだ。
サンケイの周りには2人の男が立っており、サンケイに何かを渡している。
サンケイはそれを神妙な顔で口に入れる。
わずかな静止の後、片方の男の手を掲げる。
「勝者、コ・ガイシ!」
司会の人間の熱いシャウトが聞こえる。
うん!?
まさか!?
そんな、あれは!?
料理対決だと!?
って、しまった。余計なことを考えたせいで着地が疎かに…
駄目だ。もう立て直せない。
着地に失敗し、無様に転げ落ちる。
落ちた先はステージの上だった。
サンケイが興味深げな顔で私を見つめていた。
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