第53話 ワガママで可愛くて自分が死ぬことだって怖れていないNPCです
報音寺君、天都笠さん、エミリーとの打ち合わせを終えた私は手はずどおりソードパープルヒュドラの斜め後方に移動した。隣には天都笠さんもいる。ペアをエミリー&私、天都笠さん&報音寺君かエミリー&報音寺君、天都笠さん&私のどちらにするか悩んだが暴走しがちなエミリーをどう抑えるかが鍵となるので一番冷静な報音寺君にエミリーの監督をまかせた。
私では熱くなって一緒に突撃してしまうおそれがある。全体を見ながらの回復と攻撃とのバランス。生き続けて攻撃し続けさえすれば必ずこちらが勝つのだ。私は同じことを何度も自分に言い聞かせる。
心臓が早鐘を打ち、何度も目標の動きを見るが変化はない。報音寺君も説明してくれたがソードパープルヒュドラは蛇だ。地面をヌルヌルと無音で移動する姿が動物特有の薄気味悪さを私に与え思わず身震いする。
くそっ、合図はまだなのか!
(こっちの準備はOKだ)
報音寺君から内部通信(気)を使った通信が入る。
(よし攻撃開始!)
「雹澪飛沫斬」
「エクシード流剣王技、飛来剣」
「さらに魔法カード【吹雪の牢獄】を使用!」
私が攻撃開始の指示を出した瞬間、氷をまとった剣閃とかまいたちのような剣閃が二閃、ソードパープルヒュドラの頭を斬りおとした。
遠距離攻撃でここまで威力を持った攻撃をだせるとは! 私達の心配は実は杞憂だったのではと私は思わず楽観視してしまう。蛇は寒さに弱いから氷系の攻撃がよく効くのではないかとエミリーが提案してくれたので氷系攻撃を選択したが良く効いているようだ。目に見えて動きが悪くなったのが見て取れる。頭部を切り飛ばされて怒り狂っているのだろう、その巨体がまっすぐ私達の方に向かって突き進んで来る。おそらく天都笠さんが遠距離攻撃とカード攻撃の二回攻撃したせいで動きがワンテンポ遅れているのを察知したのだろう、蛇のくせに頭のいい奴だ。
私達を標的にしたのなら私達は撤退の一手を選ぶだけだ。最速で逃げるとみるみる距離が開いていく。よし、これなら行ける。わざとソードパープルヒュドラが追いつける速度まで減速し、私達に敵意を集中させる。やはり、ソードパープルヒュドラは遠隔攻撃を持っていない。鼻先寸前まで減速しているが射程距離外なのだろう、一切攻撃が飛んでこない。
「エクシード流剣王技、飛来剣」
併走しているエミリーが第二撃を放ち、3本目の首を落とす。
これなら勝てるのではないか!? 私は自分が歓喜に震えるのを感じた。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿できそうなら15時に投稿予定ですのでよろしくお願いします。




