第528話 クーリッジに教えてあ・げ・る②
「じゃあ、どうすればいいのさ~」
服を両腕でギュッと握り、しぼり出すような声でクーリッジは私に尋ねる。
多分、ドレフュスが相手だと癇癪を起こしていただろう。
傍目にも耐えているのが分かる。
強くなるために必死なのだ。
「やり方を変えろ」
私はなるたけクーリッジにも分かるよう簡潔に述べる。
「今までお前はドレフュスの言う通りにやってきて実力をつけてきた。その結果、ドレフュスを超える力を手に入れた。けれど、お前は黒佐賀王に勝ちたい。もっと強くありたいんだろう?」
ひとつひとつ言い聞かせるように噛み砕いて言う。
クーリッジの頭は悪くない。
それを確認するためにもじっくりしゃべる。
突き放すような言い方だが突き放してはいない。
クーリッジはこの違いが分かってくれるだろうか。
「真澄さんの言う通りにすればいいの?」
おおっ!? ちゃんと敬語が出た。やればできるじゃないか。
「違う。それだと私の実力を抜いた瞬間、また元通りじゃないか。それに私はそんなに意地が良くない。お前に対する無償の愛なんてものは無い。せいぜいドレフュスに対する牽制ぐらいにしか思っていない。お前の価値はその程度だ。私がまだ、その程度にぐらいにしか考えていないことを頭に入れろ」
そう私は他の人間と違いクーリッジを特別扱いしない。
彼が去るならそれまでだ。後は追わない。
まず、それをクーリッジに理解させる。
私といればシンドイ思いをたくさんするだろう。
その負担に耐え、経験値をつむか、それとも居心地のいいドレフュスの元に戻るか。
選ぶのはクーリッジだ。
少なくとも私は選択肢を提示することができたと思う。
クーリッジにはその選択権すら与えられていなかったように思う。
そうして、腐っていった。
「自分で考え、自分で行動しろ。駄目なことをしたら理由付きで叱ってやる。だからと言って私が正しいなんて思うな。私も何が正しいかなんて分かってない」
いつしか私はクーリッジの目線に合わせて中腰で話をしていた。
クーリッジも脇目もふらず一途に私の目を見つめ聞いている。
私の言葉を一言も漏らすまいという熱意すら感じる。
「いいと思ったことはなんでもやってみろ。私もそのサポートぐらいはしてやる。私といれば、まあ、いろんな奴と会えるだろう。お前が出会ったことの無いタイプのやつもいれば、一緒にいるだけで心を悪意で塗りつぶしてくる奴もいるだろう。楽しいことや幸せなことばかりじゃないだろう」
クーリッジの熱意に当てられたのか気付けば随分としゃべっていた。
特別扱いしないと言ったそばから、これだ。気をつけねば。
普段、不真面目なやつが急に真面目な態度を取ると2割増しでカッコ良くみえるから不思議である。
「いつかお前は私を倒すだろう。その時にありがとうございましたって言えてたら、お前は誰よりも強くなってるんじゃないか」
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチッとが私の創作の『全てが上手くいった…不気味だ…明日が怖い…』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。