第527話 クーリッジに教えてあ・げ・る①
「ね~ね~早く聖竜皇とかと戦わせてよ~プレイヤーキルマイスターとかでもいいよ」
クーリッジはあどけない声で私に懇願してくる。
「阿呆か。もっとずっとずっと先の話だ。私に貢献したら戦わせてやる」
「え~話が違うよ~」
「嫌なら帰ってもいいぞ。まあ、あそこにいては、お前が強敵と戦えるのは十数年後だろうがな」
余計なコブが付いた状態で私はメッテルニヒと一緒に歩く。
後ろにはしっかり、クーリッジがついてきている。
結構、キツい言葉でたしなめたつもりだがやはり、意に介していない様子だ。
さて、どうやって指導したものか。
クーリッジにばかり、かかりきりというわけにもいかない。
帝国の侵略阻止がそもそもの目的なのだ。
そのためのクロサガ王国の最大戦力である直弟子投入。
残る候補はサンケイのみか。
しかし、一連の説得交渉。
果たして成功してるのか否か…
「ところでサンケイがどこにいるか知っているか、クーリッジ?」
「え~聖竜皇と戦わせくれたら教えてあげる~」
交換条件とは頭を使った返しだ。
はぁ。
クーリッジにも聞こえるようわざと深いため息をつく。
歩みをとめ、クーリッジの目を真っ直ぐ見つめて切り出す。
「いい機会だ。さっきの礼儀と強さについての関係性について話をしてやろう、クーリッジ」
私が立ち止まるとクーリッジも立ち止まる。
「お前、友達いないよな?」
「え~そんなの必要ないよ~皆、僕より弱いしさ~」
あからさまに嫌そうな顔をして答えをはぐらかす。
一応、友達がいないことが恥ずかしいという感覚はあるようだ。
「それだ! その考え方だ。確かにお前より実力が劣る者しか周りにいなかったんだろう。だからといって切り捨てたのがお前の弱さの原因だ」
「え~意味分かんないよ~」
「人の強さってのは色々ある。武器を作る強さ。食料を作る強さ。人を指導する強さ。戦闘における【気】の強さもその一つにすぎない」
「え~そんなの綺麗事にすぎないじゃないの~現に【気】での強さがこの国では全てだよ~」
「だからだろうお前の強さの限界は。もっと友達と話せていれば、もっと違う世界を見れたかもしれない。誰もお前に手を貸さなかったからこうなった」
「…」
「例えば、友達から誰某が凄いとかっていう情報は仕入れなかったのか? 情報収集を全てドレフュスまかしていたのか? それだとドレフュスが間違えば、お前も間違うことになるんだぞ」
まあ、この例えは極端だ。一般の友達と黒佐賀直弟子の情報を比較すれば誰だって黒佐賀直弟子の情報を信じてしまう。
全てがクーリッジのせいというわけではない。
「実際、私程度の奴なんてゴロゴロいるし、私なんか自分より強い奴にすぐに遭遇してしまう。なのにお前は自力では自分より強い奴に出会うことができなかった。結果が全ての答えを指し示している」
「…」
クーリッジは真剣に私の話を聞いている。
こういう話も新鮮なのだろう。
自分を傷つける話であるのに、逃げようとしない。
強くなろうという意思に淀みはないのだ。
「お前も今のやり方ではまずいと思ったから私に追いてきたんだろう? その認識は正しい。時間なんてあっという間に過ぎてしまう。成長できる時期は決まってる。伸ばすべき時に伸ばさないと後で後悔するぞ」
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチッとが私の創作の『先週、謎の腰痛が1週間続いた。普段は2、3日で治るのに…もしかして、この三角座りでの執筆が原因なのか。寒いからトレーナーで三角座りしてたんだが…』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。