第525話 ドレフュスという女の難解さ④
「ところで、クーリッジのここ1ヶ月の戦闘相手は? できれば心沸き立つ相手がいいな」
「いや、師匠と姉と…それと真澄さんです。後は他の弟子達に稽古をつけてやりました…」
「えっ、お姉さんとドレフュスだけ? あれだけ強いのに? 良かった~戦闘経験が豊富だったら負けてたのは私の方だったね」
クーリッジにも分かるよう大袈裟に驚く。
私の反応を見てクーリッジは初めてそれがおかしなことだと気付いたようだ。
「私は相手を人間に限定すると黒佐賀直弟子のフェビアンでしょう。パフレヴィー爺さんとも腕相撲で戦ったし~人間以外だと【吸血鬼】か。それに【神亀】。もう間もなく【魔王】とも戦うことになるんじゃないかな。次から次に強い奴が相手になるから大変だよ」
羨ましそうに私の話に聞き入るクーリッジ。
そして、それを苦々しげな表情で見るドレフュス。
思った通り、ドレフュスのアキレス腱はクーリッジだ。
なぜ、ドレフュスがそれほどクーリッジの存在に拘るのかは分からない。
しかし、拘っているという事実が重要なのだ。
クーリッジに出自が明かせない理由でもあるのかもしれない。
息子なのだろうか?
あるいは兄弟の子供とか?
それでも弟子の中でとびきり可愛がり、さらにその子が自分より強くなったのだ。
随分、誇らしいのだろう。
何事にも動じず泰然自若としているドレフュスが唯一拘っているもの、それこそがドレフュスのウィークポイントだ。
悪いがそこを突かせてもらう。
「何度でも誘うよ、クーリッジ。君に取ってみては魅力的だと思うけど、どうかな?」
「師匠~いいですよね~向こうから誘ってきてくれてるんですし~好条件だし~」
クーリッジはまるで欲しい玩具を見つけた子供のようにねだる。
自分の去就なのに、ドレフュスに決めてもらうことすら当たり前に思っている。
歪な関係に疑問すら感じていない。
「まて、クーリッジ! それは罠だ。絶対に駄目だ」
「ええっ、けど僕は師匠より強いじゃないですか。今さら、師匠のもとにいても…」
露骨な評価にドレフュスの顔は歪む。
純粋さ故に出た言葉だが事実は人を苛む。
やはり、クーリッジは強いだけで知能が低い。というより子供のままなのか。
思ったことをそのまま言葉にしている。
一片の躊躇もない。
なぜ、その言葉を使ったら駄目なのかも分かっていない。
このまま、その強さにふさわしい知恵と知識を吸収していってくれれば言うことなしだろうが、なぜかアホな子に育った。
そして、部外者の私にすら分かることだが歪みの芽のようなモノまで感じる。
ドレフュスはそれを分かっており、矯正したいのだろう。
そのためにも手元に置いておきたいのだ。
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