第521話 ホテル・ソウコクハンでの激闘⑨
「あれ!? 僕は…負けたのか!?」
その下りはもう二度目だ。記憶の混濁でも起こしたのだろうか。
仕切り直す意味でも、もう一度やるべきか。
白い目をしながら介抱してやるとふらつく足取りで立ち上がる。
「敬意を評して君のことをゴリ姉と…」
喋り終わるまでに、もう一度、【黄金気】による全力パンチを放つ。
だが、今度はまんまと受け止められる。
どうやら二撃目は無意識に着弾位置を予想し、厚めの防御布陣を取っていたようだ。
なかなか油断のならない奴だ。
「冗談だって~」
クーリッジは毒気のない笑顔で応えてくる。
「まあ、僕の負けは明らかだね。まさか、ココまで差があるとは思わなかったよ。ほんと、純粋な戦闘で負けたのは久しぶりだ。誇っていいよ。けど、次は負けない。もう少し真面目に修行して、あっという間に、君に勝ってみせるよ」
君が修行する分、私も修行している。一度、差が追いてしまうと簡単じゃないんだけどね。まだまだ、幼いな…
しかし、せっかくやる気になっているのだ。水をさすのはやめておこう。
「さて、ドレフュス師匠に用事があるんだったね。どうせ、寝てるだけだ。呼んでくるよ。なあに他の奴なら駄目でも僕なら許してくれるさ。なにせ、僕は師匠の最高傑作だからね」
そう言い残し、瓦礫が渦巻くフロアを軽やかに進んでいく。
しかし、ドレフュスの部屋に入った途端、中から怒声が聞こえる。
「この阿呆が! また、屋内戦闘なんかしやがって。弁償がいくらすると思ってるんだ!!!」
う~む、説教まで聞こえる。屋内戦闘の過失は私にもある。
仕方がない。
いっしょに謝るか。
「しかも、春日井との面会まで約束しやがって…おまえ、うちらの派閥の現状、分かってんのか?」
そっと、ドレフュスの部屋の前に立つと会話がまる聞こえだ。
「彼女はドレフュス一門の最強のこの僕に勝った。勝者には従う。それがこの国のルールじゃないか」
ほとんど泣く一歩手前の声でクーリッジは抗弁する。
「だからお前はアホなの! 何世代前のルールだ。そんなルールはとうの昔に黴が生えてるわ。自分以外の周りの立場も、もう少し考えろ。そんなことだから私より戦闘能力は高いのに代表に選ばれないんだ」
「別に代表になんか選ばれなくていいも~ん。春日井みたいな強い奴がいたんだ。僕だってもっと世界を見たい」
「はぁ…また、フェビアンみたいなことを言いやがって…」
こめかみを押さえながらドレフュスは深いため息をつく。
「それと、春日井。いつまでドアの前に突っ立てるんだ。入りなよ」
こうして、私はついにドレフュスとの交渉の機会を持てたわけだが…
なにかイメージしていた雰囲気とまるで違うのだが…
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