第517話 ホテル・ソウコクハンでの激闘⑤
「玄導、起きているか? 力を貸してくれ」
通路を通じて召喚する。しかし、応答はない。
それでも召喚は成功したようだ。神亀の巨体が私の目の前に現れる。
呼び出された神亀・玄導は瞳を閉じていた。どうやら眠っているようだ。
【主従契約】を結んだ対象は本人の意志とは関係なく召喚が可能なようだ。
玄導は主である私が目の前に立っているのに未だ眠っている。
なんてねぼすけな奴だ。こんな奴が戦闘に役立つのだろうか?
「どんな【召喚体】を呼んだところで、動く前に消し去れば!」
クーリッジはそう叫ぶと再び構えを作る。
「【赤量裂波砲】」
猛烈な量の赤の光が再び私に迫ってくる。
あれだけの規模の技が連射も可能だというのか!?
既にかなりの量の【黄金気】を使っている。
とっさに玄導の影に隠れてやり過ごす。
思った通り【赤量裂波砲】の威力では玄導の防御力を破れない。
「随分と豪快な朝のシャワーじゃのう~」
あくび混じりの声で玄導は答える。
驚くべきことにノーダメージに終わったようだ。
それでも気付け薬程度にはなったようで、玄導はようやく目を覚ました。
クーリッジも自分の技が一切通じなかったことに驚愕を受けている。
あまりに予想外の展開でどう動けばいいか分からない様子だ。
「まだ、まどろみ始めた頃じゃというのに…して主殿、ワシになんの用じゃ?」
「いや…あいつと戦ってほしくて…」
「いやじゃ。相手はまだ、童ではないか。主殿、独りでもギリギリ勝てよう…まだ、寝足りぬ。あまり、ワシや聖竜皇を頼りにするのは関心せんぞ…」
なんと【主従契約】を結んだ【使い魔】から参戦を拒否されてしまった。
しかし、よく考えれば玄導には生きがいを与えると約束して【主従契約】を結んだのだ。
格下相手に戦って張り合いなど得られるわけがない。
システム上は主従契約だが実際は対等な関係だ。
私が一方的に彼の力を借りるのは間違っているか。
「そっか…それは悪かったね、昼寝の邪魔をして。相手がなかなかの攻撃力を持っているから君の力を借りようかと思ったんだが…」
殊勝な雰囲気を作って謝罪する。今回は完全に私の落ち度だ。彼にふさわしいステージを作った上で召喚しないと働いてくれないことも分かった。今度から気をつけよう。
「そういうことなら、ワシの加護を一時的に渡そう。これなら、そこそこの相手でも遅れはとるまい…」
それだけ告げると玄導は帰還してしまった。
>【神亀の加護(弱)】を得た。
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一応、【使い魔】らしく私のことを気にはかけてくれているようだ。
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