第514話 ホテル・ソウコクハンでの激闘②
クーリッジは問答無用で斬りかかってくる。目でなんとか追えるが高速度だ。私はあえて反撃せず【黄金気】による自動防御で対応。
しかし、【黄金壁】を抜いて三筋の斬撃が私の左腕に刻まれる。
「やはり最強のカラーオーラと言ってもこの程度。発現が難解なだけで効果は各オーラのいいとこ取り。出力が凄いだけで他に目立った特性はない」
クーリッジは私に攻撃が届いたことで気をよくしたのか、間合いを取って私の【黄金気】の分析をしている。
私も一振りで三筋の斬撃を受けた理由が分からずクーリッジの武器を観察する。
「この宝具の存在が気になりますか? 僕がサーマーン討伐の報奨としてクロサガ王より賜った宝剣【桂林一枝】です。一振りするだけで三筋の斬撃効果を発揮します」
自慢するように剣を掲げる。
「もちろん【黒気】、【青気】、【剣気】で【オーラコーティング】もしてあります。あなたの【黄金気】を断ったのは【桂林一枝】のせいではないですよ。僕の【気】の実力です」
随分と自信家のようだ。自分の性能をベラベラしゃべってくれる。だが、自慢するということはコミュニケーションが全く取れない人物でもなさそうだ。
先程、ティルジットと精神戦をやってこちらも随分と消耗している。話し合いで解決するならそれにこしたことはない。
「ちょっと待って、あなたと交戦するつもりなんかないわ。私はただ、ドレフュスに話を聞いてもらいたいだけで…」
「だったらとっとと逃げ帰って下さいよ。追いませんから。まあ、このフロアからは逃しませんけどね」
意味が分からない。逃げてほしいのか、絶対に逃さないのか。
こいつ何がしたいんだ?
「別に理由なんかどうでもいいんです。主戦派とか割譲派とかも僕には関係ありません。僕には政治は分かりませんから。姉なんかは興味満々みたいですが…僕の望みはただ、あなたと殺りたいだけです」
私の顔色を読んだのかクーリッジは自分の望みを正直に告げる。
ただ、私と戦いたいだけなら素直にそう言えばいいのに…
何か性格がひね曲がっている。
「僕はねこう見えて天才なんて呼ばれてるんです。まあ、当然ですね。師匠より強いし、カラーオーラのほとんどを修得していますから。オーラマイスターに最も近い男と呼ばれています。後は【黄金気】を修得すれば黒佐賀王の後継は間違いないでしょう。随分と練習はしてるんですが【黄金気】はなかなか難しいですね。黒佐賀直弟子の皆さんが修得できないわけです。ただ、手がかりはつかめました。後は実践あるのみです。もっと研究したいのになかなか時間が取れないのが辛いとこです。すぐ師匠や姉がつまらない用事を入れるんです。そんな時、あなたが現れました。久方ぶりの黒佐賀直弟子の抜擢。それだけでなく【黄金気】まで修得してみせた。いや、【黄金気】を持っていたから黒佐賀王の教えを受けれたのかな? まあ、どうでもいいですけど。とにかく、直弟子の中では誰も修得できなかった【黄金気】を修得してみせた。これは快挙です。その上、黒佐賀王は自ら作った政軍分離の原則まで破り、あなたをダーダネルス・ガリポリの領主に据えた」
ここまで意気揚々と話をしていたがクーリッジは突然、トーンを落とした。
まるで自分の失敗を告白するようなテンションだ。
「その後はあなたも知っての通りです。あなたは宰相の次に尊い領主の座から逃げた。異界人というのはずるいですね。面倒ごとが起きれば他大陸に逃げればいい。僕らにはそれを追う手段がない。どうせ【黄金気】発動の条件も異界人であることが関係してるんじゃないですか。まあ、べつにそんなのもどうでもいいんです。僕は政治には興味ありませんから。大切なのは僕が膨大な時間を使ってまでなろうとした【黄金気使い】が大失態を犯しているということです」
「なるほど、要するに【黄金気使い】が無能だと君まで低評価をくらってしまう。それが嫌だと?」
「簡潔に言えばそういうことです」
そういうことか。ようやく理解できた。夢とか希望とかを託されてたらそれなりの対応をしなければいけないがコイツは頭のいい屑だ。
ボコっても問題ない。
「ねえ、クーリッジ君。私が君を倒せばドレフュスを連れてきてくれるかな? それと君をボコってもドレフュスとの関係は悪くならないかな?」
「ああ、それなら問題ですよ。師匠はどうせ寝てるだけですから。僕をボコるってのも大歓迎ですよ。あの人は僕が痛い目みるとすごくいい顔で喜びますから」
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