第513話 ホテル・ソウコクハンでの激闘①
ホテル・ソウコクハンは王城の北東に位置していた。その巨大な佇まいはまるで砦を思わせる。聞けばVIP御用達の高級ホテルだそうだ。
受付にドレフュスの所在を聞いてみると最上階をフロアで貸しきっているとのことだ。
なんら隠しもせず、教えてくれた。
社員教育がなってないのか、あるいはセキュリティーに絶対の自信があるのか。
エレベーターで最上階まで昇る。
このエレベーター、もちろん動力は【気】だ。
【気】のエレベーターなのだ。
電力を必要としない究極のエコエネルギー!?
謳い文句は思いつくが実践は不可能だな。
現にエレベーターボーイが大汗をかきながら【気】放出している。
昇るスピードが一定でなく、人間の疲労も大きすぎる。
そんな感想を抱いているとあっという間に最上階についた。
最上階は静まりかえり、フロアに男の子が1人立っていた。
イヴァンより年下か? ヨウメイより年上といったところだろうか。
仰々しい武器を立てかけている。
一目で業物と分かる一品だ。
「悪いですけど、ここから先は関係者以外立ち入り禁止になります~約束とかお持ちですか?」
とぼけたような声で男が尋ねてくる。おそらくドレフュスの護衛兼スタッフだろう。
「いえ、約束はしてないわ。けれど、国家の有事なの。ドレフュスに春日井が来たと言えば会ってくれるわ。そう伝えてくれる」
かなり距離を取った状態で用件を伝える。あの業物の武器といい、コイツも相当な手練だ。
気を抜いてはならない。
「素人じゃないんだし、その僅かにまとった【黄金気】を見れば、あなたが春日井真澄だということぐらい分かりますよ。確認しますけど、約束はお持ちではないんですよね」
丁寧なモノ言いだが口調には不快感が交じる。イラッとしたのがまる分かりだ。精神年齢は大分、幼いのかもしれない。
「ええ、約束はしてないわ。けれど…」
「師匠は約束が無い人とは誰とも会いません。そんなことをしたらキリがないですから。約束がないなら、そのままお帰り下さい~」
私が言い終わるのも待たず、強引に会話を切ってくる。
確かにアポ無しだが一応、直属の上司に確認ぐらい入れるのが普通なのだが。
こいつ、若いのに相当な地位にいるのか!?
「待って、少しは私の話しを…」
「警告はしたし、約束がないのも確認済。これならいいよね」
誰に確認したのか男の子は1人つぶやく。
「あ~よかった。本当にそのまま帰られたらどうしようかと思いましたよ。これなら、職務遂行上やむえず交戦したって言い訳が立ちますよね」
訳の分からない理屈をこね、1人納得している。
一体何なんだ、こいつ?
「ああっ、僕、クーリッジって言います。一応、ドレフュス師匠の弟子やってます。さあ、始めましょう」
やる気満々の目をしてクーリッジは武器を構えた。
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