第511話 当てはなくても、とりあえず当たってみましょう④
手段その③ 消耗法。
単純に情報を吐くまでずっと罵倒し続けるのだ。延々と。コツは終わりを感じさせないことである。
そうして相手を消耗させる。
根負けさせるのだ。
いつまで話を聞かなくてならないのか。
追い返すこともできない。
話を聞く以外、方法が無い。
そういった状況に陥れれば、諦めて情報を吐くことも頭にチラついてくる。
情報を吐いてドレフュスの信用度を下げるデメリットとこの状況から解放されるメリット。
その2つを天秤にかけさせる。天秤が傾けば私の勝利だ。
ティルジットの顔に疲労が見える。
だんだん、考えることも面倒になってきたころだろう。
消耗戦。そんなエネルギーを使って議論など誰もしたくはないのだ。
まして、私に勝ったところでティルジットには何のメリットもない。
私の後ろのでメッテルニヒが私達の様子を見てニヤニヤしている。
こっちもこっちで真剣だっつーの。
しかし、そろそろ頃合いか。
「分かりました。これだけ言っても分からないようならもう結構です。他の伝手を使って調べます。ただ、本当にいいんですね? 結果が主戦派に傾いた時、あなたは最後まで私の足をひっぱったと理解されますよ。ひょっとしたら、あなたの派閥だけ無視されるかもしれない。そうなってからすりよってきても遅いですよ」
ティルジットの顔に激震が走る。
「事がなった後に決断を下しても遅いんですよ」
これが手段その④ 究極の選択だ。
疲れた脳にいきなり、本当の難題をぶつける。
それもこれまでと違った究極の選択だ。
選択をミスればティルジットだけでなく、彼の直弟子、派閥、皆の生活に影響してくる。もちろんこの【ブーランジュ練気場】の職員もだ。
普段でも冷静に熟慮を重ねて決めねばならないのに、この疲弊した状態で果たして正確な答えを出すことができるか。
疲弊した中で出した答えが正確な答えだと自信を持てるか。
思考に漏れ、甘えがあったり、安易に楽な選択肢を選んだと断言できるのか。
ティルジットは自分の決断に大いに疑問を持っているはずだ。
そして、いよいよ最終フェィズだ。
「今すぐ、決断を下す必要はないでしょう。ただ、保険だけをかけるだけです。その保険がドレフュスの行方です。ドレフュスには情報源は黙っておきますよ。よしんばバレたところで叱責程度で済みますよ。その程度で済むなら保険料として安いもんでしょう」
手段その⑤ 救済。
全てから逃れられる答えを提示する。
元々、私が欲しかった情報だ。いつの間にか随分と大事になった気がするが、元々は単純にドレフュスの居場所を知りたかっただけだ。ディズレーリに相談すれば時間はかかったかもしれないが普通に教えてくれただろう。
つまり、価値としてはその程度の情報なのである。
互いにココまで労力をかけて収集する情報ではなかったのだ。
「分かった…俺の負けだ。ドレフュスの居場所を教える…」
疲れた顔でついにティルジットはその重い口を開いた。
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