第509話 当てはなくとも、とりあえず当たってみましょう②
【ブーランジュ練気場】は王城のすぐそばにある。
おそらく王城で何か変事があってもここからすぐに【気使い】を出させるためだろう。
クロサガ王国は国民皆兵とはいえ、全ての国民が戦闘に耐えれるほどの【気】を使えるわけではない。
中にはアクィナスのように戦闘系の【気】の取り扱いに関してはまるで駄目という者もいる。
実力順に初等教育、中等教育、高等教育ぐらいに建屋を分ければいいのに。
そう思うのはココで小さな子供達が【気】の扱いについて学んでいるからだ。
その証拠に【ブーランジュ練気場】の側まで来ると小さな子供を大量に発見する。
私達が来訪者だと分かると礼儀正しく挨拶をしてくれる。
我先に案内をしてくれるので断るのも大変だ。
昨日はまるでいなかったのに…
王城で変事があったとしてもこんな幼い子供達が巻き込まれるのは気分が悪い。
いや、逆か。相互警備をしているのか。
【ブーランジュ練気場】の正門の傍には昨日はいなかった門番が立っている。
そこそこ強そうである。たぶんイヴァンと同じぐらいの実力だろう。
私が試しにひと睨みしてみると顔を引きつらせる。正確に私の実力を図れている証拠だ。
ただ震えるあまり固まっているのはいただけない。子供達を守るため、捨て身の覚悟で向かってくる胆力が欲しい。
呼び止める者もおらず、入口まで素通りする。
すると昨日はなかった受付がある。美人のお姉さんがニコニコと受付をしている。
しかも私を見るなり、顔を強張らせた。
ティルジットを呼び出すように頼むと変事もせず、全力ダッシュで行ってしまった。
今度は何もしていないのに…
しばらくするとティルジットがやってきた。目は血走り、既に戦闘モードだ。
相変わらず短気な奴だ。
「何だ…お前達か…」
私達の姿を確認するとつまらないモノをみたような目でティルジットはため息を吐く。
戦闘モードは霧散し、なぜか説教モードに入っている。
「あまり部下を怯えさせるな。誰も来たのか説明できないほどテンパっていたぞ…」
「それは受付の教育ができてないお前の責任だろう」
「黒佐賀の直弟子の圧力に耐えられる奴なんて、ほとんどいねえよ! しかもテメエは【黄金気】まで持ってるだろう!!」
私としてはココに来る途中、【黄金気】の発動もしてないし、受付のお姉さんに対して特段の示威行為などした覚えはないが…
やはり、そこそこ腕が立てば探知能力も高いということなのだろうか。
なるほど。だから、無用のストレスを与えないよう昨日は最小の人数のスタッフで回していたのか。
点が線となり、ようやく得心がいく。
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