第508話 当てはなくとも、とりあえず当たってみましょう①
翌日、私は王都をトボトボと力無く歩いていた。
「なんかプランがあって歩いてるんっすか~?」
後ろからメッテルニヒが声をかけてくる。
頭に手を当て呑気そうに鼻歌なんかを歌っている。相変わらず、何を考えているのか分からない。
今日はヒントを求め、王都を歩いて回ろうとしたところを捕まった。
コイツが不思議なのはログイン時間もログイン場所も全く伝えていないのにしばらくすると自然に合流してくる点だ。
これもなんらかの【スキル】なのだろうか?
これを応用発展させれば、ログインした瞬間に胸にナイフを突き立てる究極のプレイヤー狩り【初見殺し】ができそうな気がするが…
多分、こんな【スキル】はNPC専用なんだろうな~
いつもながらに思考が横にそれる。実はメッテルニヒの言う通り全くプランが無いためである。
だが、認めるのも癪だ。
「当然っすよ。メッテルニヒとは違うんっすよ」
下手くそな声真似で返事を返す。
メッテルニヒは苦笑いしていた。
昨日は【ブーランジュ練気場】で特に何も決まることなく解散となった。
パフレヴィーは用がある時はディズレーリを通じて呼び出してくれればいつでもやってきてくれると約束してくれた。
どうもディズレーリと繋がりがあるらしい。
そのディズレーリは王城に行けばいつでも呼び出せる。
フェビアンはしばらく王都の宿屋に泊まると言っていた。
一応、場所は聞いている。
私としては【フォリー・フィリクション・フロック】に傭兵まがいの真似はさせたくない。
そのために、わざとフェビアンをアジトに置いてきたのだ。
だというのに、結局、数日で再会してしまった。
正直なところ、フェビアンの力は借りたいが【フォリー・フィリクション・フロック】の力はあまり借りたくない。
ヨウメイのような幼い子供もいるのだ。
子供を戦場に送るような外道な真似はできるだけ避けたい。
それに戦争参加は明らかに契約違反だろう。
しかし、フェビアンに力を借りれば当然、【フォリー・フィリクション・フロック】も動いてくるだろう。
戦争が終わるまで可能な限りフェビアンには荒事の仕事は割り振らず、事務的な仕事や人脈を活かす仕事を依頼しよう。
メッテルニヒの言う通り、いつまでも王都を徘徊していても意味はない。
迷っている場合ではなく、打てる手をドンドン打っていくしかないか。
さしあたっては、最大派閥のドレフュスをもう一度、説得してみよう。
フェビアンの話では派閥の意向とは別に本人の意志をしっかり持っているようだ。
いや、派閥の利益と本人の意志が対立し、自分の意見を殺していると表現したほうが正しいか。
そこの調整をしてやれば、直弟子投入に参加してくれるかもしれない。
問題はどこにいるかだが…
王城に行ってディズレーリに聞いてくるか?
いや、もっと手っ取り早い方法がある。
【ブーランジュ練気場】にもう1度、行ってティルジットに聞けばいいのだ。
そのついでに、もう1度説得すれば、また言を翻すかもしれない。
わりと単純で好戦的な男だった。
説得するなら最も容易いかもしれない。
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