第504話 直弟子会議⑥
(ディオクレティアヌス力を貸せ。この老害にはどうしても勝たねばならない)
通路を通じて心で念じるとディオクレティアヌスはすぐに返事をくれた。
(どのくらいの力が必要なのだ、主殿?)
(とりあえず、腕相撲に勝てる程度でいい、早く!)
五分の状態を維持することすらもはや、困難になってきた。今すぐ力をもらわなければ、負ける。
(腕相撲というのは?)
聖竜の皇たるディオクレティアヌスには人間の遊戯が分からなかったのだろう。
悠長な声で尋ねてくる。こっちは今にも負けそうなのだが。
(何でもいい。すぐに力をよこせ! 私が死なない、ダメージを負わない規模での最大でいい。緊急事態だ)
(分かった…)
瞬間、【黄金気】とは別の力が流れてくるのを感じた。
【聖皇理力】だ。
その力をコントロールもせず、纏いそのまま打ち付ける。
瞬時にパフレヴィーの右腕はテーブルに叩きつけられ、尚も止まらず身体ごと投げ出された。
巨大な金槌で打抜いたようにテーブルも粉々に砕け散る。
おいおい、力を渡し過ぎだろう、ディオクレティアヌス…
やはり、【聖竜理力】は威力が大きすぎて小回りが効かない。
対人で使用すれば、確実に相手を殺してしまう。
パフレヴィーのような達人相手、それも密着状態で使用しなければ環境にも被害を与えてしまうか。
私が頭の中で感想戦を繰り広げているとパフレヴィーはよろよろと起き上がる。
右腕を左手で押さえ、腕が千切れないよう固定している。
なんとか生きてはいるようだが右手がミンチ状に砕けていた。
「儂が捌ききれんほどの出力とはな…右腕が逝ってしもうたわい…」
痛がる様子もなく、パフレヴィーは冷静に自分の損傷した腕を観察する。
フェビアンが慌てて駆け寄り、治療を開始していた。
「【吸気】も反応せんかった。噂に聞く第3系統外の力か…」
不敵な笑みで私を見返す。
「かっかっかっ。儂の完敗じゃな、春日井殿。流石はフェビアンが配下に付くだけのことはある。彼奴を味方に付けるとはどれほどの御仁か試さずにはおられんかった。以後、儂はお主の力になることを約束しよう」
快活な笑みでそう提案してくる。
「もっとも儂に手勢などおらんがな~かっかっかっかっ」
なるほど、コイツも主戦派だったのか。全て計算尽くでわざと憎まれ役を演じてくれたのか。
まんまと騙された。
おかげで私の実力の一端を示せ、他の直弟子へのいい牽制にはなった。
これでもう、私を軽んじるものはいないだろう。
ようやく、対等な議論が開始できる。
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