第501話 直弟子会議③
なんとなく気まずい空気のまま、それ以降、誰も喋ることなく時間が経った。
この空気を察しでもしたのだろうか!? なぜか誰も会議室に入って来ない。
おかげで話題を変えるのが余計に難しくなった。
まもなく開始時刻なのに。
そう思っていると妙な爺さんが現れた。
「なんじゃ、ずいぶん空気が淀んでおるの~どうかしたか?」
若いころはさぞかし、もてただろう。未だ鋭さを残したが風貌がかっこいい。
「パフレヴィー老!? あなたまで来られたのか」
驚いた様子でディズレーリが席を立ち挨拶をする。
「ふぉふぉふぉ、フェビアンが久方ぶりに出席すると聞いたからの~」
パフレヴィーはフェビアンをじっと見つめる。フェビアンは動じることなく、その視線を受けている。その目は明らかに戦闘力を値踏みする好戦的な瞳だ。
「それに死ぬ前に春日井にも会っておきたかった…彼女だろう黒佐賀の跡を継ぐ【黄金気使い】は」
フェビアンの戦闘能力鑑定が終わると次は私の番だった。
穏やか声で私をそう評価された。
しかし、パフレヴィーのその一言で場内の空気はさらに悪くなった。
「おおっ~怖いの~ふぉふぉふぉ」
自分で導火線に火をつけ楽しんでいる。
戯けたような口調で肩をすくめた。
「悪いが入口に【気孔鋼壁】を張らせてもらった。大勢の言い合いなぞは老体に応える。意味も無いしの…ちょうど偶然にも直弟子の中でも高弟や実力があるやつばかりが集まっておる。このメンバーなら他のメンバーを説得するのも容易いだろう。この【気壁】を突破できる奴は勝手に入って議論に混ざればよいし…始めるか」
最後に入って来たパフレヴィーがなぜか仕切っている。
こちらから招待しておいて入場を拒否するなど無茶苦茶なルールだが確かに人数が多いと説得は手間だ。意思決定も上手くいかないだろう。
よしんば意思決定がなんとかできてもひどく薄まったものができてしまう。
幸いにも実力者が多く残っているみたいだし、パフレヴィーの提案にのるか。
目でディズレーリに了承の意を示す。
私の意を受けディズレーリが口を開く。
「今日、集まってもらったのは他でもないプレスビテリアン帝国の…」
「ちょっと待った! その前に【気文字】も使えない奴が席に残ってるんだが。そいつをまず、つまみ出すべきじゃないのか」
そう言ったのはティルジットだ。さっきからやたら、私に絡んでくる。
「彼女は発起人の1人だ。出席は当然だ」
ディズレーリは主催者の代表格として私を擁護してくれる。
「そもそもそこが可怪しい。正式な直弟子会議招聘は4人以上の直弟子が【気文字】を使って招聘文にサインするのが常識だろう。今回はペンでサインしてあったぞ。なんだ、これは!」
「帝国の脅威は既に差し迫っている。正規の手順を踏んでいたら膨大な時間がかかる。やむえず、そうしたまでだ」
「なら、春日井は【気文字】が使えるのかよ?」
皆の視線が私に集まる。
当然、使えるわけがない。
ここで退場をくらう訳にはいかないし…どう、言ったものか…
助け舟を出してくれたのは意外にもパフレヴィーだった。
「【気文字】の有無なぞ関係ないじゃろう。あんなものは練習すれば誰でもできる。逆に儂らは【黄金気】が使えん。この中の誰もが人生を賭けて発現に挑戦したはずなのにのぉ。その意味では彼女は出席資格を十分に満たしておるじゃろ」
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