第50話 ワガママで可愛くて老人の話も熱心に聞くNPCです
4人に別れ1人ずつ聞き込みを重ねた結果、意外なことにすぐに依頼者は見つかった。正確には依頼者が既に死去していることが分ったのだが。死んだ依頼者とは村一番の物知りの先生だったのだ。しかし、まだマシュマーの息子が生きているとのことなのでとりあえずその息子から話を聞いてみることにする。
私達はすぐに集合し案内された家に行ってみると、外見年齢70歳ぐらいのおじいちゃんが杖をついて出てきた。
依頼者とはこのおじいちゃんの父親であったとのことだ。もちろんその父親は既に死去しているとのことだった。
「遥か遠い大陸からよく来てくださった。藁にもすがる想いで父は毎日、神に祈りをささげ、没するその日も祈りをささげておったがこうして異世界からはるばる冒険者がきてくれるとは祈りとは通じるものじゃのぉ。冒険者殿はツヴィングリの街をご存知か? ヘンドリュック開拓村の下流にあるこの地方最大の街でな、このヘンドリュック開拓村はツヴィングリの街からの志願者で構成されておる村なんじゃ。ツヴィングリの街におれば職も食も不自由なく暮らせるはずじゃったのに、変わり者がおっての。ただツヴィングリの街で人生を消費するのは嫌だ。新しい場所で新しいことをやりたい。そう思って開拓を始めたのがきっかけじゃ。その変わり者というのがワシの父、マシュマーじゃ。マシュマーは幾許かの特殊な作物を作ることに成功し、森での特殊な素材、特殊なモンスターの素材など収穫しそれをツヴィングリの街に卸し、その代わりこの村に補給を受けおったのじゃが開拓の途中で時折、パープルヒュドラがでるようになってしまって河の流通が完全にストップしてしまったんじゃ。なんとか撃退しようと努力したが叶わず、最後は神頼みになってしまったのじゃ。今は陸送で補給を受けておるが効率が極めて悪くての・・・困っておるのじゃ。未だにツヴィングリの街からの補給がなければ自給もなりたたん街でマシュマーの言う新しいこととやらも成し遂げられたとは言いがたいがそれでも年に何人かはその新しいことを求めてこの村にやってくる。わしらの大切な村じゃ。どうか河に出没するパープルヒュドラを撃退してくれんかの」
私達はもちろん承知した。詳しい生息地をマシュマー(息子)から聞き、ようやく本来のエクストラクエストに戻った。
目的地に移動する間、時間つぶしに私は思っていた疑問を口にした。
「なんだがずいぶんと手間と時間がかかったけど、エクストラクエストっていうのはこういうものなの?」
「わたくしもこういった依頼業務を受けるのは初めてなので分りませんが、たいていこんなものなのではありませんか。内部通信(気)をお持ちの真澄様にはわずらわしく思うかもしれませんが・・・」
う~ん、エミリーはこの内部通信(気)を人の心を読める万能のスキルとでも思っているのだろうか、実際はNPCでも通信ができるだけの便利な電話にすぎないのだが・・・
ヨイショした答えを返してくれたエミリーとは間逆に天都笠さんは神妙な心持でまるで罪を打ち明けるような口ぶりで答えてくれた。
「いや、実はわたしもエクストラクエストなんていうのは単なる賑やかしだと思っいて今までそう何度も受けたことがないんだ。エクストラクエストはあくまでパーティー専用クエストで受けるのに人数がいるし、本編に関係ないエクストラクエストを受けるぐらいならグランドクエストを進めたほうが目的に叶うと思っていたんだが・・・けど、前にパープルヒュドラの討伐を受けたときはもっと簡単に依頼者は見つかったし、依頼者が死んでるなんてことはなかったんだが・・・これもオーダーメイドクエストがなせる業なのか・・・」
「元々、エクストラクエストっていうのはセカンドワールドオンラインのゲーム本編には実装されていなかったものなんだ。暁の12賢人の革命以後、国民番号、国民福祉口座を全情報体に載せた時、政府の指示で無理やり、本来無かったものを実装させたものだから若干、矛盾や齟齬が今でもあるみたいだよ」
と何でも知ってる報音寺君はまたしても本当か嘘か分らない怪情報を出してくる。一体、どこからそんな情報を仕入れてくるのやら・・・
私達が取りとめの無い会話をしていると早くも目的地に到着した。さて、このへんにパープルヒュドラはいるはずだが・・・
いた! まるで小さな山のように大きな生物が闊歩していた。一つの胴体に七つの頭。パープルに彩られた色彩が毒々しくて気持ち悪い。しかも、7匹の蛇が口元に剣までを持っている。何だあれは? 武装のつもりなのか? パープルヒュドラがまだこちらを捕捉しておらず私達が観察を続けていると天都笠さんが怯えたような声でこう言った。
「ヤバイ・・・あれはソードパープルヒュドラだ!」
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿も成功しそうな18時の予約投稿で行きたいと思っています。よろしくお願いします。




