第499話 直弟子会議①
決断したディズレーリの行動は早かった。
フェビアンからの使者の到着を待たず、開催の段取りをあっという間に整えた。
そして、早くも今日が直弟子会議の当日だ。
会議場は王城から僅かに離れた【練気場】だった。
【練気場】とは【気】を鍛錬するための施設である。クロサガ王国独自の施設でほとんどの国民はここで【気】の取り扱い方を学ぶのだ。
【練気場】で教えられていることは多種多様だ。
座学や実践、治療など様々な用途で使われ、時にはここで模擬試合なども行われる。
中でも王都の【ブーランジュ練気場】は最も歴史が古く、研究や高位人材の育成なども行っていた。
今回はそこの会議室を借りた。
私はメッテルニヒ、ディズレーリ、フェビアンの3人を伴い会議場に到着した。
予定より30分も早く着いたのに既に先客が何人かいた。
か細い男が私をじっと睨めつけている。
「アイツが蒼のティルジットだ。【青気】を使うからか非常にせっかちな奴だ。この【ブーランジュ練気場】の責任者も兼ねてる」
ディズレーリがそっと耳打ちしてくれる。
なるほど、彼がイヴァンの師匠か。
ティルジットは私を値踏みが終わったのか黙って座った。
会議場には大きなラウンドテーブルが用意されていた。
発起人である私達は固まって座る。メッテルニヒだけ座らず、手を後ろに組んで私の後ろに控える。
まるで護衛だ。私達が倒すべき帝国の人間のはずなのだが。
ティルジットは私達が座ったのを確認すると早くも口撃を開始してきた。
「久しぶりだな、フェビアン。よくのこのこ、直弟子会議なんかに来やがったな」
「ふっ、お前達があまりに不甲斐ないのでな。このまま放置しておけばダーダネルス・ガリポリ領だけでなく、クロサガ王国全体がプレスビテリアン帝国に飲まれる。そうなってからでは遅いんでな。俺が出張ってきたわけだ。まあ、今日の俺は添え物だ。詳しくはボスの言葉を聞くんだな」
フェビアンはあくまで控え目な牽制を返し、私にボールを渡してくる。
煽った状態で渡されても困るのだが…
「テメエが屑領主の春日井か! 随分、俺達の国を掻き回してくれているらしいな。そもそも、お前が領主になってから…」
イヴァンと同じでティルジットは攻撃的だ。ツンツンしている。
こういう相手には全てを喋らせず強引に話を断ち切った方が手間が少ない。
「帝国の脅威については私は無罪放免だよ。文句があるならどうしてこちらから攻めて、牽制しておかなかったの? まあ、何度も説明するのは面倒だからそこらへんも含めて全員がそろったら説明するよ」
そう言って、会話を断つ。そうこうしているとまた1人、直弟子が現れた。
「あれ~皆、早いね~まだ、30分前でしょう~」
懐に紙袋を抱えた大男が現れた。
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