第494話 たった1人で帝国の野望を阻止します④
人の耳目を集めるデカイ声で…
こいつなりの嫌味なのだろうか…
とりあえず、顔バレしてしまったので頭に巻いていたタオルを取る。
私の顔を見るとコンバウンは破顔する。
「して首尾は? 戦争の回避は可能なのでござるか? この要塞は最前線のはずなのに情報が入って来んのでござるよ」
私が呆れている間にもコンバウンは次々とまくしたてる。
諦めて私が事情を説明しようすると当のコンバウンが静止した。
「あいや、待てれよ。グラッドストン司令が間もなくやってくるでござる。2人揃っての方が面倒が省けるでござる」
ぐっ、私に取って一番呼ばれたくない奴呼んでしまったのか…
コンバウンを睨みつけるが意味をなさない。
むしろ、気配りのできる奴と褒めてほしそうな顔をしている。
会ったばかりの私を妹弟子と認め、快く送り出してくれた彼には最低限度の格好をつけたかったのだが…
仕方がない。グラッドストンが来たら現状を正直に話すか。
しばらく待つとグラッドストンは足早に駆けきた。
「これは春日井領主随分と早いお戻りですね。盗賊団【フォリー・フィリクション・フロック】と交戦したとまでは情報が入った来ていたのですが…」
「色々と状況が変わってね…」
そう切り出した私の顔に濃い疲労の色が出ていたのは誰の目にも明らかだった。
◇◆◇
「なるほど、開戦は避けられないという訳ですか…」
事情を聞き終わるとグラッドストンは顎に手を置き、一点を見つめ何かを考えている。
あれだけ大言壮語を振りかざして出て行った私を責めることなく、ただ事実だけを確認した。
「結局、口ばっかではござらぬか…グラッドストン司令が賞賛を重ねるからどれほどの実力の持ち主かと期待していたのに…ここを出る時と状況はまるで変わってないでござらぬか」
一方、コンバウンの評価は辛い。事実その通りなので反論の余地はまるでない。
こんな私にも幾許かの期待を寄せてくれていたとは申し訳ない限りである。
「口が過ぎるぞ、コンバウン。他人に過度な期待をかけ、失望するような惨めな真似をするな。そんなことをするなら自らの能力を磨き、その期待をかすめとるぐらいのことをやってみせろ」
グラッドストンは顔に見合わず自分の部下にはキツいことを言う。コンバウンは一瞬で沈黙してしまう。
私としてはグラッドストンよりもコンバウンの方に共感してしまう。
誰もがそんなふうに強くはあれない。
自分ができないことを他人に期待することは悪いことなのだろうか?
コンバウンのように声に出すことはしなくとも心の中で肩を落とすぐらいのことはやってしまう。
どんな苦境、逆境であってもグラッドストンは歪まないのだろうか?
だとすれば、どんな思想信条を持ってそれを為しているのだろうか。
「とりあえず、開戦が避けられない件に関しては了承致しました。王都にその旨、伝達し増兵を頼もうと思います。ところで、そちらのお嬢さんはどなたなのですか?」
グラッドストンがメッテルニヒに水を向ける。
「ああ、私は元帝国第3小隊の隊長っす。今は真澄さんの追っかけやってるっす」
メッテルニヒは敬礼して珍妙な回答を返してきた。
その会話がきっかけで場内は沸騰した。
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