第493話 たった1人で帝国の野望を阻止します③
「それでコレからどこへ向かうんっすか~ちゃんと当てはあるっすか~」
メッテルニヒが期待のこもらない声で尋ねてきた。
「とりあえず、大要塞マムルークを抜けて王都に向かおうと思うんだけど…その前にマムルークの関所をお前と一緒に抜けれるかどうかが不安だよ」
ちなみに転移アイテムでいつものように王都へ直行しようとしてみたが駄目だった。
最初は帝国の領土内でやってみたがアイテムが壊れるだけだった。
国を跨いでの転移は駄目なのかとクロサガ領に入ってからも試してみたがやはり駄目だった。
おそらく初期ログイン位置、戦争状態前など何らかの条件が干渉しているのだろう。
それらの条件を見つけクリアするか、もっと高位の転移アイテムがないと直行はできない仕組みなのだろう。
確かに転移アイテムの条件が緩すぎると大軍を一気に転移させることができてしまい各国のパワーバランス、戦争の方法も変わってしまうだろう。
ゲームバランスをよく考えた当然の処置だが帰り道に使えないのは地味にしんどい。
未知の場所に行くというワクワク感が無いせいでルーティンワークになってしまう。
おまけに横ではギャアギャアやかましく騒がれるし…
目下の方針は王都で黒佐賀直弟子をなんとか口説き、ガリポリ・ダーダネルスの守備に着かせる。黒佐賀直弟子は1人1人がフェビアン並のスペックを誇るという。
問題は上手く説得できるかどうかだが…
そうこう考えている内に大要塞マムルークが見えてきた。
ううっ…早い…
フェビアン達と別れてからはひたすら山を下るだけであっという間に平地に出たからか。
どの面さげて、グラッドストンと顔を合わせばいいのだ。
なるべく目立たないようにこっそり行こう。
頭にタオルを巻き付け顔を隠す。
相変わらず大要塞マムルークの周辺には野営キャンプしている者が多い。
行く時には気付かなかったがクロサガ王国に入っていく者は私達だけで、クロサガ王国から出ていく者の方が圧倒的に多い。
これが国力の差か…
おまけに準戦争状態だとかで手形を持たない人間はクロサガ王国から出国したら二度と入国できないとかいう妙な政策を取っている。
スパイを気にしての措置だと思うが一律に判断するのではなく、入出国の審査方法を変えるなりしてもう少し柔軟に対応できないものか。
このままではますますプレスビテリアン帝国と差がついてしまうではないか。
などと考えていたらあっという間に順番が来た。クロサガ王国に入国する者がほとんどいないせいか。
コソコソと顔を隠し、【審査の石版】に手を当て入国許可をもらう。
当然、無事クリア。次はメッテルニヒの番だ。
メッテルニヒが入国拒否を喰らったらどうしよう。置いていってしまおうか?
どんな結果が出るのだろうと緊張して見ていると背後から声がかかる。それも大声でだ。
「おおっ!! 春日井領主殿ではござらんか!!! 首尾はいかがでござった?」
空気を読まず私に声をかけるのはもちろんコンバウンだった。
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