第484話 墓場の賢者①
「【墓場の賢者】っていうのはね、陰険な奴なんすよ。頭はいいんすけどね。昔惚れた相手にいつまでも操を立てて。暇があるといつでも墓参りしてるからそんなあだ名がついたんす。私は昔、冒険者とかやってたんでその頃からの友人っす。まあ、パーティーメンバーって奴っすね。基本、人嫌いなんすけど、小難しい理屈だけは得意なんで~毎朝、墓参りしてるっすから明日の朝にでも会いに行くっすよ」
メッテルニヒは私の許可も取らず、勝手に予定を立てる。
「うん!? そっか、1人で墓場とかは嫌っすか。うら若い女性が1人で墓場へっていうのは危ないっすよね。最近、変な輩も増えてるって聞きますしね。なら、知り合い連れてきてもいいっすよ。皆まとめて私が守るっすよ。大丈夫っす、こう見えて私、結構強いっすから」
なんか妙な気遣いまでさせてしまっているし…
しかし、【墓場の賢者】か…
明らかにキーキャラクターくさい。
気付いてないだけで自動でクエストが発動してるんだろうか?
いずれにしても、帝国のシステムにまで噛んでいる人物と面会が持てるのだ。
利用しないのはもったいない。
どの道、私に失うものはないし、会ってみるか。
◇◆◇
翌日、私はフェビアンとヨウメイを連れてメッテルニヒとの待ち合わせ場所に到着した。
私、1人でも問題は無かったが2人に昨日あったことを伝えると同行すると言って聞かなかった。
そんなに信用が置けないのだろうか。
「おおっ!? これが真澄さんのお仲間っすか!? 2人共強そうっすね。けど、3人パーティーは攻守のバランスがイマイチっすよ。パーティー組むなら5人か、6人の方がいいっすよ」
メッテルニヒはきっかり時間通りに到着した。そして、2人を見ても物怖じすることなく接してくる。
特にフェビアンは盗賊団の頭目だけあって厳つい形相をしているのに全く臆していない。
大した胆力というか、世間知らずというか…
「じゃあ、行くっすか! こっちす。早く行かないと帰っちまうっすから」
そう言って子供のように走って、私達を先導する。
しばらく歩いただろうか。メッテルニヒが連れてきた場所は昨日、私が地下道から出てきた墓場だった。
そういえば、私が出てきた時も誰もいない墓場に1人だけいたな~
「えっと、どこだったかな…ああっ、あそこだ」
相変わらず濃い霧に包まれ、視界が悪い。
メッテルニヒが走っていった先には1人の男が墓前で佇んでいる。
周囲は人気がまるでなく、男1人きりだ。
しかし、あの出で立ち、プレイヤーか!?
その時、不意に風が吹いて一瞬、霧が晴れる。
馬鹿な!? あの服装は八束学園の制服!?
「うん!? お前は春日井か!?」
そう言って振り返ったのはプレスビテリアン帝国皇帝の我孫子だった。
私が倒すべき親玉が目の前にいたのだ。
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