第483話 帝都襲撃㉒
「ほら、あそこっす。あれが共有ゴミ箱っすよ」
ボロを出さないように気を張ってたおかげで随分、時間がかかったように思える。
ようやく目的の共有ゴミ箱とやらの場所に到着した。
「このゴミ箱には洗浄の生活魔法がかかってるんす。だから、再利用可能なんすよ」
金串を上の段の穴に入れると洗浄魔法が勝手に発動し、下の段の穴から落ちてきた。
もちろんピカピカだ。
これも魔法具なのだろうか。
生活の隅々にまで、工夫が行き届きいている
しかも、ここは下級民街だ。ココでこのレベルなら上級民街や貴族街はどれほどの工夫がされているのやら。
「不要なゴミを排出しないようにこういった施設が帝国の隅々にまで配置されてるっす。また、ルールを守らない臣民はすぐに処罰されるから注意するっすよ。この厳格なルール運用と完璧な都市設計が帝国の強さの秘密なんすよ」
私が目を白黒させて驚いた様子を見せると、尚もメッテルニヒは話を続ける。
「そう言えば、さっきの話の続きっすけど、適正の高い職業につかせるだけで終わりじゃないすよ。商売を始める場所もそうなんす。当たり前っすけど、都市設計の数値が最も高い人間が都市設計してるっす。彼の指示する都市設計通りに都市建設を進めたっす。都市設計の邪魔になる建物は壊してしまったし、昔から住んでる人にも随分、移動してもらったす。職業訓練を終えた人間が商売を始める場合、指示された場所なら無料っすけど、移転する場合は多額の違約金が必要っす。まあ、最高の都市設計の通りに配置されてるから移転したところで見通しは暗いんすけど~」
ということはあれだけ、必死に働いてる串焼き屋さんも夢叶うことなく、一生あの場で商売をしないといけないのか。
いや、夢が叶って屋根付きの店舗を構えたとしても、都市設計による好立地の加護を失うから成功の見込みは薄いということか…
職業訓練を施して辺りまでは純粋に凄いと憧れたがこのカラクリはどうなんだろう…
「職業訓練が終わった後までは完璧だと思うけど、その後の処置が雑じゃない? あなたの説明だと、どれだけ努力しても現状のステータスを更新することができないように思えるけど」
思わず不満が口に出ていた。そこまで完璧な都市設計をしているなら
「事実、その通りっすよ。すぐ打ち止めになっちまうっす。そうすると皆、勤労意欲をなくしちまうんです。けど、それも想定の内っすよ。その後、サボらないように監督するのはまた、別の人間の仕事っす」
「難民として受け入れた以上は難民も帝国臣民なんじゃないの。だったら、彼らの幸福追求にも努めるべきじゃないの? そこらへん、あなたはどう思うの?」
「難しいっすね。けど、どうせ難民出身者。原資は帝国臣民の税から捻出されてるし…生計を立てられるだけで幸せなんじゃないんすか? それ以上を求めるには才能が足りないわけですっし~」
「適正に基づいて職業選択を斡旋するっていうのはいいのよ。ただ、普通の生活を手に入れた先に希望がなさすぎるのよ。衣食住が完備された後は朽ちていくだけなの? それを幸せと呼べるの?」
「う~ん、難しい質問っすね~国家が個人の内面にまで口を出すのは…いや、そんな難しい質問には答えられないっすよ」
他国の内情に熱くなりすぎただろうか。メッテルニヒもやや引き気味になっている。
「ああでも、仲間の墓場の賢者なら答えられるかもっすね~彼はこれらのシステムの一部を担当した人間っすから」
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