第481話 帝都襲撃⑳
私は逃げるようにして串焼き屋を後にした。
バツの悪さを誤魔化すために足早に進んでいたが、気付いたら競歩のようなスピードが出ていた。
そのせいだろうか、突然、呼び止められた。
「ちょっと、そこのお姉さん! 止まるっすよ」
声の主は女だった。背が高く体格もしっかりしている。私と同じぐらいの背丈がある。
ハスキーな声をしており、革鎧を纏い、その下にキッチリと帝国の軍服を着ている。
街を巡回している帝国兵だろうか!?
振り返って我が身を見れば、確かに私は珍妙な格好をしている。
服装は福天高校の制服のアバターのまま。
しかも、両の手に金串を持ってである。金串は長さ40センチほど有り、上手く使えば武器にもなる。
こんな妙なものを2本も携帯しているのは明らかに不審者だ。
職質されても不思議ではない。
雑多な人種が交じり合う第5階層では私の服装自体はそれほど珍しくもないが、よく考えれば北の砦を攻めた時も同じ格好をしていた。
あれだけの大立ち回りをしでかしたのだ。手配書ぐらい出回っているか…
しかも、私の目撃者は全員存命。複数人から証言が取れる。
早くも私の方針の矛盾点が出てきた。
見たところ、体格は優れているが一般兵だ。特に特殊な【スキル】も持っていないだろう。
殺さず無効化できるか?
それは簡単だが、無効化しても、また、この女が復帰すれば手配書が回るだろう。そうなるとこの辺りで情報収集することができなくなる。
そんなことを繰り返えせば、帝都内で活動すること自体が不可能になってしまう。
NPCの兵士を殺さずかつ、帝国の侵攻を阻止するという矛盾する2つの命題に対するアプローチの方法すら見えていないのに帝都へ出禁にまでなっては目も当てられない。
差し当たっては目の前の兵士をどう処置するべきか…
「金串を振り回して遊んじゃ危ないっすよ。子供に当たればケガをするっしょ。それにその金串は串焼き屋の備品すよ。食べ終わったら速やかに共有ゴミ箱に返却しないと」
共有ゴミ箱って何だ?
いや、それよりもそんな理由で呼び止めたのか?
これは罠か? 既に市中に手配書は回っており、私の情報が売られたんじゃないのか?
子供に金串が当たれば危ないってえらくハートフルな理由じゃないか。
私が反応できずにいると女は1人、納得した表情で話を続けていく。
「食べ歩きのルールを知ってないんっすね? その身なりといい…お姉さん、この国の人間じゃないっすね。難民でも商人といった感じでもないっすね…。冒険者かな? 仕方がない…私が教えてあげるっす。ついて来るっす」
私の承諾を待つことなく、女は強引に指示を出してくる。
混乱する私はとりあえず、黙って女兵士の言うことを聞くことにした。
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