第478話 帝都襲撃⑰
翌日、私は朝早くからログインした。フェビアンもヨウメイもまだ寝ているようである。
フェビアンはおそらく私がログインしたことに気付いただろうが昨日、言った通り声をかけずにいてくれた。
起こさないようにそっと部屋をでる。
盗賊ギルドの受付にはいつもの女がいた。
相変わらず目に大きな隈を作っている。夜勤だろうか? 机にはアルコールのビンが無造作に置かれている。1本は空で、もう1本は半分ほどしか残っていない。そして、腰にはナイフを携帯している。
あれだけの量を飲んでいれば、容易く倒せそうなものだが佇まいには一切、隙がない。
あの妙な敬語を使うゴリラ男よりもおそらく強いだろう。
コイツも達人級と考えて間違いない。
妙な地雷を踏んで衝突しないようにせねば。
受付の女に黙礼し、盗賊組合の外に出る。
そこではたと気付く。
よく考えれば、この下水道からの脱出方法が分からないではないか!?
急いで盗賊組合の建物に戻り受付の女に尋ねたが『自分で調べろ』とにべもない。
ホテルマン並みの接客を要求してるわけじゃないんだ。道や手書きの地図くらいくれればいいのに。
私の【聖皇式理力探知】を使えば地図など容易いが、たぶん、今だと下水道の全体像がつかめていないので帝都全域に探知をかけてしまう。
エネルギーコントロールがシビアすぎるのだ。
使うと感覚が鋭敏な達人級から敵視されだけでなく、こちらの位置も特定されてしまう。
うまく出力を抑えて撃てれば、非常に役立つスキルなのだが…
時間もあることだし、地道に探すか…
確かここらへんにあった縦階段を使ったような…
だが、縦階段は何本もあり、どれが正解だか分からない。
まあ、どれを使っても地上には出れそうだ。
どんな罠が来ても対応できるように念のため【黄金気】を展開して登っていく。
地上に出た場所はよりにもよって墓場だった。
早朝の墓場は人気の気配がまるでなく、朝靄に包まれどこか幻想的であった。
なるほど、ひと目につかず、たとえ、見つかっても墓参りに来たと言えば誰からも怪しまれない理想的な場所だ。
しかし、欲を言えばもう少し墓場から距離を取って出口を作ってほしかった。
私の目的はココで眠る人達の静謐を破ることとなるだろう。
なんとなく罰当たりな感じもする。
とは言っても別に軍人墓地や、国立墓地というわけでもない。
一般の方が眠る墓地だ。それもお安い部類の。装飾もなく簡素な墓石が並んでいるだけでなく、中にはただ大きな石を組み合わせただけの墓も存在している。
雑草もそこかしこに生え、あまり管理が行き届いていない。
それでも参拝者はいるものだ。遠くに1人、墓石の前で黙祷を捧げている人がいる。先程から微動だにせず、ずっと立っている。
邪魔をしてはまずい。
私はそっと、墓場を抜け出し、皇城の方角へ足早に駆けた。
皇城は巨大でココからでもはっきり見えていた。
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