第476話 帝都襲撃⑮
「私のボスはフェビアン様だ。コイツじゃない」
怒りで我を忘れて、クロサガ王国で行ったやりとりをヨウメイは繰り返す。
だがそれは地雷だ。
予想通りフェビアンは冷たく突き放す。
「なら、お前がここから去れ。出て行くのはお前の方だ」
フェビアンは冷ややかな声で告げる。
この一言でようやくヨウメイは自分が越えてはいけない一線を越えたと理解したようだ。
先程までの勢いがピタリと止まり、二の句が紡げない。
本来ならヨウメイはクレバーな人間だ。同じミスを2度繰り返すような人間ではない。
それをこうもぶちまけてしまったのは全て私のせいだ。
今まで我慢に我慢を重ねていたのが今回の一件でとうとうタガが吹き飛んでしまったせいだろう。
「金に困ったのならココの情報を売ればいい。褒章金がもらえるはずだ」
フェビアンはさらに追い打ちをかける。
「そんなことできるはずが…」
ヨウメイは青い顔をしてすっかり意気消沈してしまった。
しかし、その目は未だ反骨心に満ちている。
そんなヨウメイを見てフェビアンが言葉を重ねる。
「それがルールってもんだ。春日井の言葉には絶対服従。断るなら命を賭けろ。覚悟もないのに駄々をこねる子供は必要ない」
フェビアンは自分のお気に入りの部下であっても容赦がない。冷徹に子供のヨウメイに大人の対応を求める。
「それに春日井の言葉にはまだ続きがあったろう」
そうして自分は悪役に徹しきってから私に絶妙なのパスを渡す。
落としておいてから引き上げる。
ひどい演出だ。
だが、ここでヨウメイを失うわけにはいかない。
ありがたくのっからせてもらう。
「2人とも頭を冷やして。まずフェビアン、あなたがヨウメイの進退を決めないで。私のパーティーにヨウメイは必要。ヨウメイに去ってもらっては私が困る。それとヨウメイ。フェビアンのルールは却下するわ。最終的に決定事項を下す前ならどんな反対意見も可よ。闊達な意見交換は私も望むところよ。けど、反対意見は必ず理性的に述べること。自分の感情のままにぶちまけないこと。いいわね」
ヨウメイに私がフェビアンの上司であることを強調するため、まずフェビアンから叱る。
その上でヨウメイに牽制を入れるのも忘れない。
そこまで言いきると今度は自分の落ち度を話す。
「それから私も言葉足らずだったわ。ごめんなさい」
一呼吸おいてから私も謝罪に移る。謝るべきは謝る。
やはりもっと婉曲に攻めるべきだった。
ヨウメイがあそこまで怒ってくるのは完全に想定外だった。
いつまでたってもスマートに説得できないのは私の悪い癖だ。今後の反省材料にしよう。
「戦略対象を変えることにしたのよ。帝国そのものを相手にしたのなら今までの策が有効だけど、私達の目的は帝国侵攻の阻止。だったら無理をして帝国軍人を敵に回さなくてもいいのよ」
いよいよフェビアン達が帰ってくる間に練った修正プランを開示する。ここからが本当の勝負である。
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