第475話 帝都襲撃⑭
「はあ? 馬鹿ですか、あんた」
ヨウメイの口調は元に戻っていた。しみじみと他者を軽蔑する冷えた言葉だった。
あまりにも素っ頓狂な提案を受けたので面食らったせいだろう。
「相手は私達を殺しに来てるんですよ。当然、こちらも殺すつもりで反撃するのが当然じゃないですか」
「彼らも職業軍人として攻撃してきてるんだ。命令されたからやってるだけだ。私怨は無いはずだよ」
私はできるだけ柔らかく、口論にならないようなスタイルを作るべくやんわりと自分の主張を入れた。怒鳴りあったという事実が後々、尾を引くと思ったのだ。
「そんなことは関係ない。そもそも理由なんかどうでもいい。殺しに来たから殺し返すだけだ。あんたはただ、人殺しをブルってるだけじゃないか」
全くその通りである。但し、一つだけ意味合いが間違っている。
私の場合、殺しすぎてしまうのだ。
全力の【黄金気】を使って一般兵を相手にするとオーバーキルに陥る。
力が入り過ぎてしまえば、あっという間に大量虐殺を引き起こしてしまう。
それも避けたいのだ。
そして、意味の無い殺人も避けたい。
人間であるNPCを私の気まぐれな人撫でで殺したくはない。
「任務達成のために大量に殺す。そうして帝国の侵攻計画に打撃を与える。それがセオリーでしょう。そのために【トラップ設置】スキルを持つ私の同行が許された。青二才の私が同行できたのは【トラップ】を使って1度に大量殺人を行なうためだ。ただでさえ、穴だらけの計画なのに余計な制約をさらに加えて…あんた本当に帝国の侵攻を阻止したいと思ってるですか!!!」
凄まじい剣幕でヨウメイは反論してくる。
思った以上の抵抗だ。ただ方針に反対してるだけでなく、自分の存在意義まで傷つけてしまったようだ。
だが、ここで怯んではいられない。
無茶を言って彼女達の負担を大きくしているのは私なのだから。
私が揺れることなく説得しなければ。
「元々、困難なことをやろうとしてたんだ。さらに一つ障害が増えたとしても大きな違いはない。それに…」
「だったらあんた1人でやりなよ。私達は私達で勝手にやらせてもらう。さっさと部外者は出て行けよ」
取り付く暇もない。私に最後まで喋らせず、癇癪を爆発させて議論を切り捨ててしまった。
「そこまでだ。ヨウメイ。ボスの決定だ。それ以上の異論は俺が認めない」
驚くべきことにフェビアンが割って入ってきてくれた。
これまでずっと黙って聞いてはいてくれていたが流石に今回の方針には反対するだろうと思っていた。
そのぐらい私の方針は無茶なものだという自覚がある。
なのに文句も言わず賛成してくれるらしい。
部下の鑑だな、フェビアンは。
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