第473話 帝都襲撃⑫
威勢のいいことを言ってやってのけた結果がこれだ。
私は盗賊組合にあるアジトに戻ってきていた。
フェビアンとヨウメイはアジトに着いて休憩を取るなり、別の砦の偵察にいった。正直、1人になりたかったのでありがたい。
この上、彼らから罵声を浴びては精神が持たない。いや、彼らは罵倒などしないか。
重苦しい空気を作ってくるだけだ。
フェビアンもヨウメイもNPCなのに重い空気まで精製できるのだから大したものだ。人に奉仕する機械としては明らかに不要な概念だ。
ダメだ。思考が頑張ってる自分は悪くない、間違ってるのは周りの方だ! になっている。
こういう思考で物事を進めると必ず破綻する。もっと根源的な問いを掘り起こして思考しなくては反省の意味がない。
なぜ自分の考えたことはことごとく失敗するのだろう。
準備ができていなかった。
想定ができていなかった。
覚悟ができていなかった。
次々と答えが浮かんでくる。
具体的には北の砦の最終攻撃目標が設置できていなかった。北の砦への侵入方法を考えていなかった。砦の防衛戦力の規模を予想していなかった。砦の防衛戦力をどう無効化するか考えていなかった。砦からの脱出方法を考えていなかった。どの時点で退却するか、進退分岐点を計画していなかった。そもそもなぜ北の砦を攻めたのか。なぜ北の砦でなくてはならなかったのか。北の砦を攻める戦略的意味は。
浮かんでは消え、浮かんで消え、取り留めのない疑問が私を苛む。
つまるところ心の準備ができていなかったわけだ。
いざ、その場になりさえすれば身体が勝手に動く。そんな幻想を信じていた。
人間と全く同じ動作、思考をするNPC情報体。それだけではなく、ひとりひとりに生きてきた環境がある。
孤児として捨てられ盗賊団に拾われた者、家が貧乏であったため軍隊に入り成り上がろうとする者。
彼らには個々の性格を決定づけた背景があり、その背景を生み出した人間社会がある。私達の現実世界とは違った独自の社会、独自の文化だ。
見て、聞いて、嗅いで、話して、触って、彼らは確かにそこにいるのだ。
人間とNPCとの違いは何か。
彼らは昔のコンピューターゲームの中に存在したという特定のメッセージ等だけを返してくる存在ではない。
その状態から進化に進化を重ね、多種多様なパターンを吸収し、AIを拡張をし続けた。
セカンドワールド・オンライン登場以前から既にNPCから全ての会話応対パターンを引き出すのは不可能とされていた。
パターンが多すぎて全てを引き出す前に人間の寿命が尽きてしまうからだ。
そして、インフィニット・ステーションによって嗅覚と触覚のコミニケーションを取ることすら可能となり、今もまだ拡張を続けているという。
彼らにできないのは、完全なゼロから誰も考えたこともないパターンを作り出すことだけだ。
それすらも【十二賢人】の協力の元、セカンドワールド・オンラインのゲームシステムは可能にしてしまったという噂もある。
なぜを考えると底のない泥沼か…どうするを考える段階なのかもしれない。
要するに自分に関係の無いNPCを殺せるか殺せないかだ。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
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