第471話 帝都襲撃⑩
「貴様一体何者だ!!!」
槍を持った兵士が誰何しながら突っ込んでくる。
状況確認か攻撃かどちらかにしろってんだ。
私は答えることなく、向かってきた兵士を殴り飛ばす。思ったほど強くない。この程度なら何人集まっても平気だ。
2人目を無力化すると欲が出てきた。
このまま突入し、敵司令部を叩くか!?
しかし、3人目を倒したあたりで様子が変わってきた。
槍を構えて間合いを作り不用意に攻め込んでこない。
私が一方踏み出せば、後方に大きく3歩下がる。
その間、次々と増援が到着し周囲を全て兵士で囲まれた。
ある意味、陽動は成功したがココまで過剰戦力を投入されるのは予想外だ。
一瞬でも攻めあぐね、立ち止まったのが原因か。
おまけにこの期におよんでまだ、私はNPCの人殺しに徹しきれていない。
薄々感じていたことだが今の私はPKよりもNPC殺しの方が忌避感を強く持っている。
プレイヤーをPKするのはまだいい。財産や経験値を奪われるだけでアバターそのものは消失しない。
しかし、NPC殺しはそうではない。階層ごとに状況は変わってくるようだが第5階層のNPCは死ねば完全消滅だ。
第5階層のNPCのキャラクターメイキングは完璧すぎるのだ。
顔の造形が異なっているなど当たり前。ひとりひとりのキャラクターに両親がいて、友人知人がいて、育った環境、できあがった人格、その全てが現実世界の人間社会と同じ情報量で作られているのだ。
私が後顧の憂いを断つために目の前のNPCを殺害すれば、彼の友人、両親は泣くだろう。ひょっとしたら兄弟や子供もいるかもしれない。
そう思うと非情になりきれずどうしても拳が止まる。
自分のやっていることが偽善だということは分かっている。殺さず重症を負わせてることだって考えようによっては酷いことだ。後遺症が残る可能性もあるし、治らない可能性だってある。休業補償が出るかどうかだって分からない。
私がココに攻め込んで暴れまくっていること自体が彼らに取っては迷惑だ。
目の前で襲ってくる兵士達よりも敵地にあって未だに心が決められない、そんな甘ちょろい私の心の方が問題かもしれない。
十重二重に囲まれた私は正直、身動きが取れない。
ココから脱出しようと思えば殺さずに突破するというのは不可能だろう。
いよいよ覚悟を決める時かもしれない。最初の相手が名前も分からない敵国の兵士というのは幸運なことか不幸ことなのか…
腰を落とし、右手に殺傷できるだけの【黄金気】の充填し、解き放とうとした瞬間、兵達に動揺が見られる。
ほぼ正反対の方角が白煙に包まれていたのだ。
白煙の中から勢い良く出てきたのはもちろんフェビアンだった。
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