第470話 帝都襲撃⑨
個々の兵の質はクロサガ王国が勝っている。しかし、肝心の兵の数はプレスビテリアン帝国の方が圧倒的だ。単純な兵の配置を見てもそれを思い知らされる。
何が言いたいかと言うと監視の兵の数が多すぎて侵入できないってことだ。
ディズレーリが無謀だと言った意味が今頃になって理解できた。
さて、どうしたものか…
【黄金烈眞掌】を使えばこのぐらいの薄壁、容易に突破できるがスマートではないし…
いや、テロ攻撃という本来の趣旨には合っているのか。しかし、できれば壊滅的ダメージというものを与えたいところだが…
「春日井は【壁面走行】や【天面走行】は使えないのか?」
フェビアンができて当然だよなという表情をしてさらっと聞いてくる。
私が大きく首を振り否定すると残念そうな目をして返してきた。
「そうか…【気配断ち】と一緒に教えておけばよかったな。基本的に【気のエネルギー操作】、【気のエネルギー性質の変換】ができれば容易いのだが…まあ、俺も【壁走り】までしか使えんのだが…」
【壁面走行】と【壁走り】の違いについてツッコミたいが今は無視だ。
「プランが無いようなら二方向から挟撃をかけよう。春日井は城壁を破壊するなり、よじ登るなりして騒ぎを起こしてくれ。俺達はその隙に反対側から攻める。ヨウメイは遠距離攻撃の仕掛けを持っている。それを使い警備の兵を無力化した後、俺が【気配断ち】を使って侵入する。まあ、今日は偵察と様子見だ。無理はしないさ」
「時間を合わせて行動しよう。いや、時間差の方がさらに警備の隙をつけるか!? とにかく、今回は様子見だ。あまり深入りしないように気をつけよう。目的は敵の強さの確認と重要施設の警備状況の確認だ」
軽く打ち合わせをして後、私は反対側の城壁に移動する。砦の兵士に不審がられないように大きく迂回し、ついでにヨウメイの遠距離攻撃用の仕掛け作成のための時間も稼ぐ。
ちなみにヨウメイの仕掛けとは巨大な弓矢だ。木々の間に巨大なパチンコのようなものを設置し矢をつがえるのだ。命中率は高くないがソコソコの距離を飛ぶとのことだ。
普段は岩などを弾にして投石機として使うらしいがそれだと外した時の音がひどいので今回、矢を使うそうだ。
矢も持ち合わせがないので木を削って今から作るとのことだ。ヨウメイには苦労をかける。
そうこうしているうちに時間になった。フェビアン達のいる位置の正反対の位置だと奇襲を読まれるかもしれないのでわざと角度をつける。
このまま、城壁を【黄金烈眞掌】で吹き飛ばそうとも思ったがせっかくなので【壁面走行】を試してみたい。
要するに【気のエネルギー性質の変換】を用いて【吸着】の性質を持った【気】を足に纏えばいいのだろう。
試しに2、3歩、歩いて見るとネチャネチャしている気がする。後は自重で落ちないように駆け上がればいいだけだろう。
私は助走をつけて一気に城壁を駆け上がる。おおっ!!! 成功だ。しかし…
バキ! ボコ! と凄まじい異音が周囲に響く。城壁にはしっかり、私の足跡刻まれている。
【気のエネルギー操作】が必要な理由はこれだったか。
城壁を登りきり、見張りの兵士を倒した頃には周りからワラワラと兵士が沸いてきた。
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