第467話 帝都襲撃⑥
ずっとフェビアンとばかり意見交換してたがヨウメイの意見はどうなんだろう? この世界の平均的な? 人間の考え方もこれで合ってるのだろうか。
「ヨウメイは何か意見ある?」
私はフェビアンに水を向けてみる。フェビアンと私が議論している間、ヨウメイも体力回復に努めながら興味深そうに聞いていたからだ。
「私は帝国に来たのも始めてですし、一国の軍事行動を遅滞させる方法など思いもよりません。【トラップ設置】能力が買われ、同行させてもらえたのなら、大人しく命令に従いたいと思いますが…」
アジトでのつれない態度は何処へやら。それともこれは新手の嫌がらせなのか、わざわざ敬語を使って、そんな殊勝なことをヨウメイは言ってくる。
正直、私のために働いてくれるなら乱暴でも忌憚の無い意見の方がありがたいのだが。
さて、どうするか…
行動開始のための人材は手に入れたが肝心の行動目標が定まらない。
命じさえすれば、すぐに動いてくれる人材があるのに指示が思いつかない。
とりあえず、情報収集でもしてもらうか…
いや、それもどういった種類の情報を仕入れて欲しいか具体的なレシピを書かないとまるきり検討違いな情報を仕入れてくるかもしれない。
例えばA氏という人間の趣味や好物、家族関係、人間関係なんて種類の情報を仕入れてきても肝心のA氏がクロサガ王国侵攻に何の関係も無い人間だった場合、徒労に終わる。
リソースも時間も限られているのだ。無駄な行為はできるだけ避けたい。
「そういえば、さっき、戦争反対派を説得してクロサガ王国侵攻を見送るための決議出させるって言ってたけど、プレスビテリアン帝国は議会制なの?」
ふと、命令系統の確認、政治体制の確認がまるでできていないことに気づきフェビアンに尋ねる。
「いや、完全な皇帝の専制だ。全て皇帝が決裁し、皇帝が実行する完璧な形の独裁だ」
やはり思った通りの絶対君主制か。そうでなければ、『帝国』とは名乗らないだろうから予想はしていたが。
「ただ皇帝といえど、1人の人間ができることは限られているからな。知識だってそれぞれの専門家には絶対及ばないし、そういう意味では皇帝を補弼する家臣団は存在する。家臣団も究極的には人の集まりだから意見が別れ対立するシーンも当然あるだろうと想定して言ったセリフだ。何か目星があって言ったセリフではない」
この辺は私の領主経験と同じだな。専門家に知識で勝てない中で責任を持つ人間はどう動くべきかってことだ。我孫子はどうやって自分より知識が多い者をまとめあげているのだろうか。
「しかし、どいつもこいつも愛国心が高く、皇帝への忠誠は高い。侵攻反対派を援助するとしても、それは帝国の利益に叶うから侵攻反対を唱えているのであって、皇帝の不利益になることや帝国の国益を損なうことには絶対に賛成しないだろう。さらに国が豊かだから政治が腐敗していない。賄賂なんかで釣るのも不可能だな」
なるほど、我孫子の治世の強さだな。私なんて部下に愛想を尽かされるレベルの領主なのに。まだ攻め込んでもいないのに器の差を見せつけてくれる。
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