第466話 帝都襲撃⑤
そうだった。私はフェビアンの上司だったのだ。
なまじフェビアンが部下として完成しているから甘えぱなしだったがこういった場合、まずよくやったと手放しで褒めるのが常識だ。
せっかく苦労して見つけてくれたねぐらに何をケチつけていたのだろう。
何の代案も無しに無責任は批判を垂れ流していた。
理想を抱くのはいい。ただ、力の無い者の理想などただの妄想だ。
今の私は領主ですらない。
馬鹿だ。私は。
3流の演者でも演技するだけマシ。互いにこれが演技だと分かっているが必要な演技・儀式というものがある。今回は正にこのケースに当たるだろう。
しかし、この場ですぐ意見を翻し、フェビアンを褒め称えるのは会話の流れ的に不可能だ。技術的には可能だがあまりにもフェビアンを子供扱いしているだろう。
ココは彼を信じて気付かなかったことにさせてもらおう。
私が視線でフェビアンに謝罪すると話を進めた。
「では、説得も終わったことだし本題に入ろうか」
フェビアンは説得という言葉で先程の私の間違いを流してくれた。ヨウメイも今のやりとりの違和感に気付いていない。
全く私にはもったいない部下達だ。
「それで帝国の転覆、あるいは打撃を与えるっても麻薬を蔓延らせるとはそんなのは駄目なんだろう?」
私は声も出さずに頷く。当然だ。たとえそれが可能であっても病気や麻薬を蔓延させるとなると時間がかかりすぎる。
ダーダネルス・ガリポリ領の侵攻はもう間もなくなのだ。
「まあ、時間もかかるし、用意するアテもないしな」
フェビアンも同じ結論のようだ。これは互いの前提条件を確かめるための単なる確認作業だ。
「火事なんかも嫌だろう? 民間人に被害が出る軍略は取りたくないって性格だよな」
私の性質をよく見ぬいている。現代日本に生きる私は当然、民間人に被害が出る作戦など容認できない。本当は敵国の軍人が傷つくのも嫌なのだ。
しかし、そこまで甘っちょろいことを口に出すことはできない。
それを指示するということはフェビアンに鋼鉄の鎖を巻きつけ手足縛って泳げと言っているようなものだからだ。
「あくまでも民間人には手を出さず、需要施設や要人などを狙い戦争の回避を模索する。その前提で動くんだよな。例えば戦争反対派に協力して政権を奪取する。あるいはクロサガ王国侵攻を見送る決議なんかを出させるみたいな…」
フェビアンは私の求めるところを正確に理解している。これはやはり、黒佐賀師匠の元で学び、現代日本人の平均的なモノの考え方を理解しるからだろうか。私にとっては非常にありがたいことだがそれでもフェビアンの引き出しのいくつかを封印した気がしてならない。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
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