第457話 盗賊団のアジトへようこそ⑤
私も車座の中に入り、自分が倒した男の話を聞く。この男、サ・ソウトウというらしいがしゃべりが非常に達者で自分が敗北した話なのに遺恨をまるで感じさせない。
しかも上手く話が盛ってあって面白い。いつの間にか、私が道行くお婆さんを助けたことになっている。
こうして、盗賊団のメンバーと一緒にコロコロと笑いながら話を聞いていれば、当然、心の垣根も取れてくる。
お菓子なんかを出しあい和気藹々とした雰囲気が生まれた頃、事件は起きた。
夢中になって話を聞いていると、突如、頭から水をぶっかけられたのだ。
探すまでもない犯人はヨウメイだろう。
なかなか、メンタルに効く攻撃をしてくる。
私は怒りを抑え、無言で真上を確認するとバケツとロープのしかけが見えた。
非常に古典的なしかけだ。
【気配断ち】で私の頭上まで忍び寄り、罠を設置したというわけだ。
ただの水なので【黄金気】による防御も発動しない。発動したとしても害意がないので素通りする。
私の自動防御の特性についてそこまで考えていたのかどうかは分からない。
それでも頭から水をぶっかけられたという不快な気持ちは確実に残った。
私としてはナイフを突き立てられるより、気分が悪い。
【聖皇式理力探知】を使用。
周囲の盗賊団は驚いた顔をしている。人によっては内面を覗きこまれたような感覚を味わう高位探知だかだ。
すぐさま、位置を特定。
仏の顔も3度までと言うがいつまでも甘い顔をすればそれは舐められることに繋がる。
怒声が聞こえるような環境というのは大嫌いだが、節度も礼儀も無い組織はすぐに腐る。
怒りが持続している内に指導しておくべきだろう。
位置特定は完了している。私は一緒に話を聞いた皆に挨拶をすることもなく、飛び出した。
ヨウメイも私が追ってきているのが分かったのか逃走を開始している。
まだ、かなり距離があるのに私が追ってきているのを理解しているようだ。
ヨウメイが逃げ込んだ先はフェビアンのいる頭目の部屋だった。
どこへ逃げようが関係ない。私を虚仮にした代償は必ず支払わせる。
頭目の部屋に入るとヨウメイがフェビアンに泣きついている際中だった。
「頭目~あの女が私をイジメるんです~」
まさか、最初からこのシチュエーションを作ることが狙いだったのか!?
私はヨウメイの読みの深さに脱帽する。
「お気に入りのナイフも潰されちゃいましたし~」
ご丁寧に折れたナイフの刀身を見せて証拠としている。しかし、柄の部分はスクラップにした。抜身の刀身だけで判別できるものなのか?
「居ても害になるだけですよ。さっさとあんな女、追い出しちゃいましょうよ~」
しなだれ声でフェビアンに語りかける。但し、ヨウメイはまだ子供で雰囲気をまるで作れていない。
ドラマに出てくる妖艶な女性の真似を子供がやっているようにしか聞こえない。
「言ったはずだぞ、ヨウメイ。彼女は客だ。丁重にもてなせと」
寝ぼけ眼をこすりながらもハッキリとした声でフェビアンは宣言する。
「追い出すなどもっての他だ。嫌ならお前が出て行け。この組織は既に彼女の指揮下にある」
読んで頂きありがとうございました。ちょっと早いですが書けたんで投稿しちゃいます。そして明日の投稿もなんとか頑張ります。
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