第452話 盗賊団フォリー・フィリクション・フロック⑩
「はぁああああああああああああああ」
「やぁああああああああああああああ」
「【白気劫濁砲】」
フェビアンの叫びと共に猛烈な量の光の束が私を襲う。
やはり、フェビアンは【白気弾】の派生系を使ってきた。但し、それはとても弾の形をしていない。大規模なエネルギー放出だ。
正面決戦では負ける。私は『次の一撃で勝負をつけたい』と言った。力比べとは言っていない。
大規模エネルギー弾を瞬時に躱し、懐に潜り込む。
しかし、フェビアンに動揺はない。エネルギー放出を維持したまま私の移動先に砲口を向けてくる。
フェビアンのと私の掌底の射線が重なる。
僅かにフェビアンの方が上手だ。大規模エネルギー放出の直撃を受け、自分の腕が消失していくのを感じる。
だが、私の切り札は浸透勁の一種だ。拳が無くても放てる。そして、瞬間の爆発力でなら私が勝つ。
「【黄金烈眞槍掌】」
腕の形が崩壊していく中で私は渾身の力を込めて叫ぶ。
先端が消失した私の腕を大規模エネルギー放出地点へ突っ込ませる。
とうとう、フェビアンの【白気劫濁砲】のエネルギー放出起点である拳を捉えた。
腕の塊が接触したことで内蔵されていた【黄金気の槍】がパイルバンカーの要領で射出される。
大規模なエネルギー放出の砲台であるフェビアンの腕に同じく凝縮された攻性エネルギーの塊である【黄金の槍】が貫通したのだ。
当然、フェビアンの両腕は2つの大規模エネルギーの衝突に耐え切れず内部から大量の血を放出しながら圧壊する。
「うっかり、止めを刺しそうになったけどこのぐらいにしておこうか。大丈夫?」
私は努めて明るい声で戦闘停止を提案する。
同時に【白気】を使い今、損傷させたフェビアンの両腕の治療を始める。
このまま連続技である【竜皇封滅】を使えば止めを刺せるが両腕が再起不能になる可能性もある。
相手はNPCなのだ。私達のように回復アイテムで簡単に修復できるわけでもない。
下手をすれば後遺症が残る可能性もある。引き際を上手く見極めないとダメだ。
「ああっ…俺の負けだな…」
虚ろな様子でフェビアンは負けを認めてくれた。
「良かった…正面をきった力と力のぶつかり合いじゃなかったから認めてくれないかと思ったよ」
「いや、戦闘の最中に正々堂々なんて概念を持ち出すほど子供じゃない。こう見えても俺は盗賊団の頭なんだぜ。戦闘中の決めつけや思い込みは自分と仲間を死に追いやる。それは問題ない。ただ、本当に上手くやられちまったなぁ~と思って」
しみじみとした表情でフェビアンは感想を漏らす。
「別にこれが人生の終わりって訳じゃないでしょ。むしろ、これからだよ、あんたの人生は」
「そうだな、お前を頭に仰ぐ人生ってのはひどく面白そうだ。少なくとも退屈はしなさそうだ」
そう言うフェビアンの表情は憑き物が落ちたように非常にサバサバしていた。
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